映画「監獄ロック」~公開を待たずに交通事故死~   

相手役の女優さんに注目して紹介する、エルヴィス関連映画第二弾は「監獄ロック」(Jailhouse Rock ,1957)です。
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この映画は、今年のアカデミー賞授賞式の「Musical is Back」のコーナーで、『ウエストサイド物語』を筆頭に、往年のミュージカル映画がスクリーンに映し出されたときにもちらっと出てきました。そっか、これもミュージカル映画なんだな、と思いました。でもまだこのころは、一応エルヴィスは歌ってもおかしくないシチュエーションで歌っているのですよ。つまり、せりふを言いながら歌いだしたり、歌いながら女性を口説いたり、とか、そういうミュージカル独特の不自然さはない映画なのです。後年になると、不自然さてんこ盛りの映画がたくさん出てくるのですが。。。

さて、今回の主役、エルヴィスの相手役の女優さんは、ジュディ・タイラーという人。1933年生まれで、撮影当時23歳。私、この映画を観たとき、この女優さんは力のありそうな人だなあと思いました。演技にリアリティと力強さがある。美しいだけのへなへなした女優さんではないな、と感じました。とびっきりの美人というわけではないけれど、知的な感じで、年齢を重ねても、脇役でも存在感を発揮できそうな人です。ところがこの女優さん、「監獄ロック」撮影終了3日後に交通事故で亡くなっているのです。23歳にして二度目の結婚をしたばかりで、夫と共に車でロスからニューヨークに帰る途中のことだったそうです。テレビの子供番組で活躍し、映画出演は「監獄ロック」が2作目。しかしこの作品の公開を待たずしてこの世を去ってしまったのです。なんだか、ジェームズ・ディーンを思い出します。こういう不運な人もいるのですね。 ジュディの事故死を知ったエルヴィスは相当ショックだったそうです。二人のこの写真が私は大好き。恋人というより、姉、弟という感じで楽しそう。
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「監獄ロック」でのジュディの役どころは、レコード会社の営業担当部員です。 ストーリーを簡単に説明すると、ひょんなことから(エルヴィス映画にはこれが多い)、酒場で男を殴り殺してしまい服役することになった青年(エルヴィスは)、同房の元カントリー歌手の男からギターの手ほどきを受ける。テレビ中継されるという刑務所内のショーに出演すると、これが評判になり歌に自信をつける。刑期が終了し、あるクラブで歌っているところをジュディ扮する営業部員に気に入られ、レコードデビューすることになる。その後、青年エルヴィスは映画の世界にも進出し成功を収めるが、ご多分にもれず天狗になり、ジュディとも、マネージャーを買って出た元カントリー歌手の男とも仲たがいをするが、怪我をしたりして苦難の時代を乗り越えて、心を入れ替えめでたしめでたし、という映画です。10段階で6から7の映画でしょうか。いや、前回の「ヤング・ヤング・パレード」が5と言っているので(私が)、これは7ということにしておこう。この映画には大好きな曲がたくさん入っているし。「監獄ロック」は映画バージョンよりレコードバージョンのほうが好きですが(前奏が全然違う)、Queen のフレディ・マーキュリーが1986年のウエンブリー・ライブで歌った「ベイビー・アイ・ドント・ケア」を歌うシーンが特に好き。ちょっとぎこちないダンス、プールなのにセーターを着ているちぐはぐさ、とびっきりの笑顔、すべてだ~い好きです。そして、ここに紹介するもう一曲、「トリート・ミー・ナイス」も軽快で好きな曲。そういえば、小泉元総理がグレースランドを訪れたあとに屋外でスピーチをしたときに、ブッシュ前大統領に向かって「トリート・ミー・ナイス してくれてありがとう」と、エルヴィスのこの曲の題名にかけてジョークを飛ばしていましたが、ブッシュ大統領はわからなかったみたい。それほどメジャーな曲ではありません。このシーンで、一生懸命最後までのりのりで手拍子をしているジュディの姿も印象的。このリズム、結構難しいんですよね。続けていると、途中でおかしくなってきます。それと、後ろのバンドは実際のエルヴィスのバンドのメンバーなのですが、エルヴィスが歌いはじめに、右後ろにふり返り、ウッドベースのビル・ブラックのほうを見るんです。で、ビルは、ちょっと照れたように笑います。これはどうしてだろう、とずっと気になっていたのですが、ビルの演奏の出だしが遅れたんじゃないか、と最近気づきました。なんだかビルの手が少し遅れているように思うので。もちろん音はスタジオで別に録音されたものが使用されていますが、実際の現場でも演奏していたのではないでしょうか。ビルが遅れて音が聞こえなかったのでエルヴィスがふり返ったんじゃないかなあ、と私は思っています。違うかな。この曲、エルヴィスが途中でふっと間をとる歌い方がかっこいいです。

不慮の事故で早世してしまったジュディ・タイラーですが、エルヴィスの代表作映画に出演したということで彼女の名前は映画史に刻まれたと思います。よかったね、ジュディ。

by oakpark | 2009-03-13 01:28 | ELVIS関連映画

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