最近読んだ本 「夜間飛行」「誰か」「クライマーズ。ハイ」   

● 「夜間飛行』 サン=テグジュペリ
『星の王子さま』の著者である、サン=テグジュペリの代表作ということで選びましたが、格調高い文章が、ちと私には難しすぎました。『狭き門』のアンドレ・ジッドが「実録的価値と文学性を合わせもつ名作」として強く推奨する作品だそうです。空から見た地上、厳しい自然現象と人間、命を賭けた男の世界、などが高度な筆致で描かれています。堀口大学氏の訳も格調高いです。

● 『誰か』 宮部みゆき
久しぶりに宮部作品を読んでみました。いや~、宮部作品は、いつ読んでも面白くて楽しめます。ミステリーなので、もちろん殺人事件が起こるのですが、眉をしかめたくなるような残酷なシーンやえぐい状況など(未成年の虐待とか)が出てこないのが安心して読める理由かも。登場人物の性格設定もわかりやすく、ストーリーの展開も説得力があります。謎解きのミステリーなので、「あ、ここで、伏線張るためにこのシーン、せりふを入れたな」と思える部分がないこともありませんが、許せる範囲です。近所の図書館の予約リストの人気ナンバーワンでもあったこの作品、やはりおもしろかったですよ。

● 『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫
この人の作品は以前に『出口のない海』を読んだことがあります。とてもドラマティックな語り口で、時々はっとするような美しい表現が使われている印象をもち、きっとこの作家はロマンティストなんだろうな、と思いました。まあ、作家というのはみんなロマンティストなのかもしれませんが。今回の『クライマーズ・ハイ』では、新聞社を舞台にして話を展開しながら、山登りのシーンを挿入するという手法が使われていて、ドラマティックな盛り上げ方をしています。
ただ、私としては、実際に起きた日航機墜落事故を「金より輝くメダル」なんて表現してほしくなかったなあ、とちらと思いました。作者の横山秀夫は事故当時、地元群馬の上毛新聞社の記者だったそうで、そのときの経験を基にして書いているので、実際同じような会話が新聞社の中て飛び交っていたのでしょう。世界最大の飛行機事故であるこの事故のことを新聞記者たちが、歴史に残る記事を書いて名を上げるまたのないチャンスと捉えていたことも理解はできます。でも、関係者はどう思うかな、と気になりました。新聞社の名前を実際とは別のものに変えているので、事故そのものも架空のものに変えても良かったのではないかとさえ思いました。
この事故が起こったとき、私は、大阪国際空港のある豊中市の学校に勤めていて、たまたま、この事故で父親を亡くした女子生徒と会話を交わしたことがあるので、余計にそう思ってしまうのかもしれません。とってもかわいい女の子で(というか、すごい美貌の持ち主だった)、「お父さんのことを書いたんだね」という私の問いかけに「ハイ」と目をくりっとさせて答えてくれたのが忘れられません。当時私はまだ独身でしたが、「あ~、この子の成長を見たかっただろうな」と、一瞬、そのお父様の無念さに思いをはせ、胸がつまる思いをしたことを覚えています。
7月には堤真一主演の映画が公開されるようです。
どんな映画になっているのでしょうか。


そして今は「エリック・クラプトン自伝」を読んでいます~。

by oakpark | 2008-06-12 01:13 |

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