映画「草原の輝き」   

前回紹介した本「阪急電車」と以前に紹介した映画「クラッシュ」は登場人物がつながっていきながら物語が進展するという手法が似ていて私は面白く感じましたが、もしかしたら私はこの「つながり」というモチーフが好きなのではないか、と気づきました〈笑)

思えば映画がとても好きになった〈かなり偏りはありますが)のも「つながり」がわかるようになってから。以前はただぼーっと映画を観ていて、面白いか面白くないかのそれだけだったのですが、この映画に出ているこの俳優はあの映画に出ている俳優だったとか、この俳優とこの俳優は親子だったとか、いいなと思ったら前に好きだった映画と同じ監督だった、といったことを発見できるようになり、より映画に興味を持つようになりました。それにはIMDbというサイトを知ったことが大きいです。

というわけで、私の映画ファン人生〈そんな大げさな!)の黎明期に観た映画で印象に残っているものも時々紹介していこうかなと思います。映画に目覚めたばかりの頃は、伏線がわかったとか、些細なことにもとても感激していたように思います。目覚めるの、とっても遅かったです。

さて、今回紹介したいのは,エリア・カザン監督の1961年の作品、「草原の輝き」(The Splendor in the Grass)です。これは梅田の大毎地下に大好きな「ローマの休日」を見に行ったときの二本立ての一本で、「ローマの休日」以上に鮮烈に私の印象に残った作品です。「ローマ~」は以前にも観ていた作品だったので。

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1920年代のアメリカ中西部。高校生のバッド〈ウォーレン・ビーティ)とディーン〈ナタリー・ウッド)は恋人同士で、二人は深く愛し合っていた。しかし、高校生という立場、また保守的な土地柄、時代のせいもあって、デートをしてキスをして帰るだけの関係から先には進めない。悶々とする2人。バッドには奔放な姉がいて親から疎まれている。両親、特に父親は優等生のバッドに大きな期待をかけている。イェール大学に行って、自分と同じように実業家になって金持ちになれという。危なっかしいけれど自由に行動しているように見える姉を心配しつつも羨ましく思うバッド。親からのプレッシャー、進展しない彼女との関係に対する苛立ちから、ついにバッドは欲望を抑えきれなくなり、クラスのちょっと派手なタイプの女の子と関係を持ってしまう。翌日、クラスの友達はディーニーのことを「寝取られたのね」と噂し始める。そして国語の授業、ワーズワースの詩の朗読を女教師から命じられ、その文の意味の解釈を求められたディーニーは、自分なりの解釈を披露しながら、ほとばしる感情を制御できなくなり、教室を飛び出してしまう。  その後、このことが原因で精神に異常をきたしてしまったディーニー、大恐慌で父親の事業が失敗しどん底の生活に落ちたバッドには別々の試練が待ち受けていた。。。。

かなりネタバレのあらすじですみません。 なんといってもこの詩の朗読のシーンがジーンと来ました。私はこの映画で初めてナタリー・ウッドを見たのですが、なんて素敵な人だろう~、なんて強烈な演技だろう~と思いました。この時点で「理由なき反抗」他数々の作品に出演していてすでにスター。「ウエスト・サイド・ストーリー」は同じ年に公開のようですが、どちらが先に撮影されたのでしょう。一方、この映画でデビューのウォーレン・ビーティのことはそれより以前の「ぼ~っと映画鑑賞」時代にロシア革命のことを描いた映画「レッズ」を観ていて、私の好みかも?と思っていたのですが、この映画を観てその思いを確信したしました。 ちょっと奥目ごのみかもです、わたし。
ラストシーンも印象に残りました。2人が再会するシーン。バッドの奥さんの表情がせつなくて。そう! わたし、こういう、美人の若い女性が苦労している風情ってのにも惹かれるのです。たとえば、思い出すのは「ブロークバック・マウンテン」のヒース・レジャーが演じた〈泣)青年の奥さん。くたびれ具合が良かったわア~。
ナタリー・ウッドの衣装にも注目です。 思い余って水に飛び込むシーンの真っ赤なドレスが視覚的に鮮烈でした。再会シーンは白のスーツ。計算しつくした衣装選択と思われます。 一人二役で別の役も演じています。

あと、この映画に関する思い出としてこんなことがありました。
昔勤めていた高校で、ある生徒が授業をサボったとかで担任に呼び出されて叱られている場面に遭遇しました。なぜそんなことをしたの?という担任に対して、その子が「文化祭でやる劇の研究をするために『草原の輝き』を見に行っていました」と言ったのです。私、思わず、その映画いいよね~と口出ししそうになりました。担任の先生は無言でしたが〈笑)。その子があまりにも堂々と「だからいいだろう~」てきな言い方をしていたことと、いかついタイプの子〈野球部かアメフト部)なのに、『草原の輝き』を口に出したのがおかしくてよく覚えています。それにしても、その高校の文化祭の劇の出し物はすごかったな~。今から思うと名作が多かった!

かなりネタバレのレビューでしたが、お奨めの映画です!!

このワーズワースの詩、いつか全部読んでみたいな~と思いつつ、まだ実現していません。いつだったか、本屋でワーズワースの詩集を見つけ衝動買いしましたが、この詩は載っていなかったです。それほど有名な詩ではないのかしら。 こんな詩です。 詩ってのもいいですね~。

Though nothing can bring back the hour
Of splendor in the grass
Of glory in the flower
We will grieve not, rather find
Strength in what remains behind

草原の輝き、花の栄光
再びそれは還らずとも
嘆くなかれ
その奥に秘めたる力を見出すべし

by oakpark | 2008-04-25 11:44 | 映画

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