映画「ボビー」   

「ボビー」とは、ロバート・フランシス・ケネディのこと。
私は、この人物のことを、ケネディ大統領の実弟であるという事と、1968年に暗殺されたということ。兄と同じように、当時、高まりつつあった、公民権運動を進めようとしていた人であるということくらいしか知らなかったので、この映画を見ると、もっとよくわかるかと思いました。

しかし、その期待は裏切られました。
この映画は、ボビー・ケネディの伝記映画ではなく、ボビーがロサンゼルスのアンバサダーホテルで暗殺された時にその場に居合わせた22人の人物を描くことによって、当時の時代の雰囲気、人々の生活、思想、などをオムニバス形式で映し出した、群像劇的な映画でした。

期待は裏切られましたが、ずっしりと心に残る、見ごたえのある映画でした。

まず驚いたのがキャストの豪華さ。
主役をはれそうな大物俳優が多く出演しています。

監督、脚本は、エミリオ・エステベス。そして劇中で彼の妻役を演じているのがかつての恋人のデミ・ムーア。しかも現在のデミの夫であるアシュトン・キャッチャーも出ている!すごすぎる~。
エミリオのお父さんのチャーリー・シーンも出ています。ボビーの暗殺がテレビで放映されたことを幼かったエミリオは覚えており、しかも、父であるチャーリー・シーンがエミリオをアンバサダーホテルに連れて行ってくれた思い出があるそうです。そのほかにも、アンソニー・ホプキンス、ハリー・ベラフォンテ、シャロン・ストーン、ヘレン・ハント、イライジャ・ウッド、クリスチャン・スレイターなどが出演していて、それぞれ独特の存在感を示しています。

暗殺が行われた時間の16時間前からの22人の行動を見せていくのですが、そこにはさまざまな人間ドラマが展開されています。人種問題、夫婦問題、ベトナム戦争、LSD、老いの問題、などなど。 それぞれを短くいろいろな順序で見せ、視聴者に考えさせながら、事件の瞬間を迎えるという手法です。


ロバート・ケネディを含む、当時の実際の映像と、映画のキャストの映像が上手くつなぎ合わされて、見ているうちにその現場に居合わせているような緊張感を味わいます。

最後に、ロバートが1968年の4月4日に行った'Mindless Menace of Violence’(愚かな暴力の脅威)というスピーチが流れるなか、混乱を極めた現場、嘆き悲しむ人々の映像が流れ、なんともいえない悲しい気分にさせられます。ロバートの声は、若干、軽いというか、明るい声で、語り口は淡々としています。スローモーションで映し出される悲劇的な映像と上手く対比していて、こういう言い方は不謹慎かもしれませんが、上手く作られた映画だと感じました。

正直それまでは、少々退屈な場面もあったのですが、最後の10分を見て、これだけでもこの映画を見てよかったと思いました。

Youtubeでロバートの演説や映像を見てみましたが、理想を熱く語る彼は、かっこよかったです。 「パフォーマンス」と見る向きもあるのかもしれないけれど、黒人のゲットーの中に入り、人々と握手し、言葉を交わし、時には子供の顔をなでている姿に心を打たれました。

理想を声高々に訴えることのできるアメリカの政治家はかっこいいな、と思いました。

by oakpark | 2007-09-03 20:14 | 映画

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