映画 『最後のマイウェイ』   

エルヴィスファンのお友達に誘われて、『最後のマイウェイ』を観てきました。関東では渋谷のル・シネマでしか上映していないマイナーな映画。観客も年配の方々ばかり。149分の長い映画でしかもフランス語なので、もしかしたら眠ってしまうかも~?なんて思いながら観にいきましたが、なんのなんの、最初のシーンからとても惹き付けられ、最後で飽きることなく観る事ができました。


しかも途中から主役のクロード・フランソワがエルヴィスのように見えてきて、お友達が誘ってきた意味がわかりました。お葬式のシーンでは、エルヴィスのお葬式とかぶり、泣けてきました。お隣のお友達(私より数倍熱心なエルヴィスファン)はさめざめと泣いていました。完全にエルヴィスと同化していたようです。それ位、描かれていた時代の雰囲気、スターの生活、苦悩、が私たちの知っているエルヴィスのそれにソックリだったのです。でも、こんな見方をするのはちょっと特殊かも。普通の人はこの映画にどんな感想を持つのかな。
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『最後のMy Way』(CLO CLO My Way,2013) 監督:フローラン・エミリオ・シリ  出演:ジェレミー・レニエ、ブノア・マジメル他

フランク・シナトラの歌唱で有名で、エルヴィスほかたくさんの歌手たちにカバーされている名曲「マイ・ウェイ」は、もともとはクロード・フランソワの曲。タイトルはComme d'habitude(いつものように) メロディーは同じだけれど、歌詞がぜんぜん違います。別れた元彼女のことを未練たっぷりに歌った歌(フランス語全然わからないけど~)。 この曲をたまたま聞いた「ダイアナ」のポール・アンカが引退しそうなフランク・シナトラを引き止めるためにドラマティックな英語歌詞をつけて名曲「マイ・ウェイ」が出来たそうです。


以下、ネタばれありますので、これから見る予定のある方はお気をつけください。

クロード・フランソワはエジプト生まれ。フランス出身の父とイタリア人の母の間に生まれました。厳格な父はスエズ運河で働いていて、フランソワは幼い頃からスエズ運河を行き来する船を眺め大きな世界に憧れながら、バイオリンやドラムなどの演奏を学びました。1956年にスエズ運河が国有化され、一家は移住を余儀なくされただけでなく、父親の体調悪化のため経済的苦境に陥ります。フランソワは、ドラマーの仕事などで家族を支えようとするのだけれど、厳格な父はお堅い仕事しか認めようとしない。父の死に際でさえ認めてもらえなかったつらさが、その後のフランソワの生き方に影響を及ぼしているのかもしれないと思いました。

とにかく、彼の成功への渇望感、必死さは並大抵ではない。せりふの中にもあったけれど、「ちびで、がにまたで、変な声」を乗り越えるため、ありとあらゆる手段と発想の奇抜さで、表舞台に立とうとする。時代的にはちょっとちがうかも?と思ったが、ロカビリー→ソウル→ディスコミュージックと、そのときどきの流行をさぐり、滑稽に思えるくらい、流行に乗せようとする。まさに「自分のやりたい音楽」ではなく、「受ける音楽」を模索しつづけた音楽人生だったよう。自己プロデュース力がすごい。そこはエルヴィスと違うなあ。エルヴィスはプロデュースは他人に任せることが多かったから。でも、全体を通じてエルヴィスを真似たのかな?と思えるシーンや、エルヴィスみたいと思えるところもたくさんあって、興味深かった。時代が同じだからというのもあるけれど、エルヴィスもこんなことをしていたんだろうなあと思いながら観ていた。たとえば、コンサート会場や事務所で出待ち、入り待ちをするファンに一人ひとり声をかけたり握手したりなどのサービスをする姿や、女の子にモテモテなのに独占欲も強く、彼女に去られるたびにひどく落ち込んでしまうところなど。自信とコンプレックスが入り混じっているのですよね。彼女の成功にまで嫉妬したりして。

次々出てくる、クロードの彼女たちがみんなかわいくて、ファッションもかわいくて、そのあたりも見所の一つですね。一時期クロードとお付き合いしていたアイドル歌手のフランス・ガルについてはちょっと調べてみました。本物とソックリの女優さんが演じていましたねえ。ちょっとびっくりしたのですが、このフランス・ガルさん、すごくかわいいのですが、驚くほどへたなんですよ。このあと上手になるんでしょうか。それともこのとき調子が悪かっただけなのかな?「夢見るシャンソン人形」


有名になるために無我夢中で突き進むけれど、いったん有名になると、そのあとが難しい。その地位を保つために、どんどん新しい企画を考えなければいけないし、敵も多くなる。ストレスのせいで家族や、マネージャーや付き人にあたるようになり、信じていた人に去られてしまう。どこかで聞いたような話だ。世間体を気にして、整形をしたり、本当は二人いる子供を一人だと偽ったり。一体、自分は何者だ?と思っていたことでしょう。成功の代償は大きいのですね。 最後、入浴時に、電気の切れかけた電球をさわり、感電死してしまうのだけれど、子供の頃からの癖で、几帳面で後回しにできない性格だったのでしょう。39歳の若さ。まだまだこれからもヒット曲を出し、世界にも打って出ることができたでしょうに。フランス国内では人気歌手だったけれど、国外ではほとんど無名のまま終わってしまったようです。

敏腕マネージャーのポールが何気にかっこいいなあ、と思ってみていると、なんと、ブノア・マジメルだった!おっさんになっていた~。それともわざと太ったのでしょうか。「年下の人」(1999)でジュリエット・ビノシュと共演したころ(その後結婚&離婚)はすごくかっこよかったのに。

主演のジェレミー・レニエは本物のクロード・フランソワにそっくりでした。お友達によると、ダルデンヌ兄弟の作品(私はまだ1本も観てませんが)にたくさん出演している実力派俳優だそうです。

そうそう、エルヴィスの歌った「マイ・ボーイ」も、元はクロードの歌で、英語の詩をつけたものだったのですね。
エルヴィスには娘しかいないのに、なぜこの歌を歌ったのかなあなんて思っていましたが、「愛するわが子」という点では、クロードと同じ気持ちだったのでしょうね。
クロード・フランソワのParce que je t'aime mon enfant
エルヴィスの'My Boy'

最後に、「ザ・ヴォイス」シナトラの'My Way'


私はやっぱり、'My Way'はエルヴィス版より、シナトラ版のほうが好きだな。
エルヴィス版も、その後の唐突に終わった人生を思うと泣けてくるのですが。
一応、エルヴィス版も。(やっぱりね)

by oakpark | 2013-07-28 00:55 | 映画 | Comments(2)

Commented by hiromi at 2014-06-17 16:05 x
こんちはー
やっとテレビでこれを見たので
感想を読み返しにきました。
そしたらマネージャーがブノア・マジメル!!
気がつかなかったわぁというか
若いころの写真と見比べてもまだ信じられない。
笑っちゃうぐらい別人でしたね。

本物のクロクロのレニエさんと同じえらが張った骨格なんですね。
こちらの方がそっくりです。
いやー、そのぐらいマジメルさんの変わりようが凄かった。

この映画面白かった!
走る車にファンがずっと並走してキスしたりする必至さが
他人事じゃない(爆笑)
お金持ちになっても、どんなにモテても
心落ち着く日がないなんて
スターは大変だよね。
Commented by June at 2014-06-18 00:05 x
♪ hiromiさん

コメントありがとう~~~。
面白かったねこの映画。見所満載でしたよね。時代、ファッション、親子関係。。。 フランス語だったけれど、飽きることなく最後まで観ることができました。

ブノア・マジメル、知ってた? 私も少し前、映画にはまり始めたころに、何作か観ていて、かっこいい人だなあ、と思っていたのよ。一時、ジュリエット・ビノシュと同棲していたんじゃないかなあ。 どの作品で知ってました? ほんと変わってしまったけれど、かっこよさの片鱗はあったよ。

>並走してキスする必死さ
他人事じゃないって、あーた、そんなことするの~~?(笑)

スターは大変だよ。平凡が、楽です。。。

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