ミュージカル「ミリオン・ダラー・カルテット」を観に行った   

さて、一旦旅行記を中断し、先日観に行ったミュージカルのことを書きます。

「ミリオンダラー・カルテット」は、2010年にブロードウェイで上演され好評を博し、トニー賞もとったミュージカルです。渋谷のヒカリエ内に新しくできたミュージカル専用の劇場「東急シアターオーヴ」で上演される二つ目の演目(一つ目は「ウエスト・サイド・ストーリー」)として日本にやってきました。私は早々と5月にチケットを予約し、楽しみにしていました。ただ、題材が地味なだけに、一般受けするんだろうか、という心配もありました。純粋に自分が楽しむというより、身内の晴れ舞台を心配しているような気分で劇場に向かいました。
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しかし心配は無用でした。劇場は満員で、皆さんとても楽しんでいるようで、ラストのコンサート部分では観客も立ち上がって大盛りあがりでした。観客はシニアな方が多かったですが、だからこそ、音楽そのものに対する本物の情熱のようなものを感じました。私はコンサート部分がもっと長くてもよかったなあ、と思いました。もうアンコールはないよというお知らせ替わりの、例の'Elvis has left the building'のアナウンスとか、エルヴィスがスカーフをプレゼントするパフォーマンスとか、時代違うけど~、あれって、70年代の話だけど~、ってのはあったけれど、そういうのもご愛嬌です。全体を通して、ダンスがないので、ミュージカルというより、劇とコンサートといった感じですが、出演者全員歌がうまく、聴き応えがありました。特にジョニー・キャッシュ役の俳優さんがかっこよかったです。低音の声もよかったし。エルヴィスにはどうしても厳しくなりますねえ。でも、最後の「ハウンド・ドッグ」はなかなか迫力ありました。本物のエルヴィスはもっとすごかったのでしょうけれど。トニー賞をとったジェリー・リー・ルイス役の俳優さん、はピアノも上手で本人の雰囲気がとても出ていたように思います。カール・パーキンスもよかったです。本人とはあまり似ていないけれど、大柄でいかにも南部の男ってかんじでした。

さて、ミュージカルのことを少し説明します。

ひとことで言うと、このミュージカルは、以前から存在している「ミリオンダラー・カルテット」というタイトルのレコードからアイデアをもらった創作ミュージカルなのです。レコードは、宣伝文句にあるように「ジョニー・キャッシュ、ジェリー・リー・ルイス、カール・パーキンス、そしてエルヴィス・プレスリーのたった一度だけの奇跡のセッション」を録音したものなのですが、それは最初から予定されていたセッションではなく、偶然4人が居合わせ、たまたまセッションになったというものです。セッションが始まった時、スタジオオーナーのサム・フィリップスが、これは逃してはなるまいと思ったらしく慌てて録音したそうです。その時点では、レコードにしようなんて思ってはいなかったでしょう。「ミリオンダラー・カルテット」という名前の由来は、セッションの終わりころにサムが呼んだ地元の新聞記者が、このセッションに「ミリオンダラー・カルテット」(100万ドルの四重奏)という名前をつけて、翌日の新聞で紹介したことによるそうです。なぜ「ミリオンダラー」なんてつけたのでしょうね。クリスマスも近いし、景気よくいったのかしら。というわけで、レコードには自然発生的に飛び出した4人の歌が録音されているわけですが、マイクを生きしない普段の彼らの会話が入っていて興味深いです。「この曲知ってる?」とか「次これ歌おうぜ」みたいな会話の中から彼らの歌に対する愛情が感じられます。 そして、この4人のなかで、当時こんな会話がなされてもおかしくなかったのではなかろうかという部分をドラマティックに創作し、劇にして作り上げたのが今回のミュージカルというわけです。つまり、4人がサン・スタジオに集まったのは事実だけれど、劇の部分は全く架空の物語というわけです。今回の劇ではカール・パーキンスがちょっと悪役っぽかったですが、実際どうだったか、なんて全然わかりません。少なくとも「ミリオンダラー・カルテット」でのセッションを聞く限りでは、和気あいあいと仲良くやっています。そして、なぜこの4人が鉢合うことになったかというと。

時は1956年の12月4日。その年の初めにエルヴィスは、歌手としてデビューさせてもらったサム・フィリップスのレーベル「サン・レコード」から大手のRCAに移籍し、「ハートブレイク・ホテル」「ハウンド・ドッグ」「冷たくしないで」をヒットさせ、話題沸騰の歌手になっていました。この日、21歳のエルヴィスは夏にラスベガスを訪れた時に知り合ったショーガール(でも、真面目そうな)のマリリン・エヴァンスを連れて、古巣のサン・スタジオをふらっと訪ねてみたのです。成功した自分をサム・フィリップスに見せたい気持ちもあったのでしょうね。なにせまだ21歳の若造ですから。すると、ちょうどカール・パーキンスがレコーディングをしていて、ブレイク前のジェリー・リー・ルイスは伴奏のピアニストとして呼ばれていました。サン・スタジオの新星、ジョニー・キャッシュもその場にいました(あとからサムに呼ばれたという説もある)。カールとエルヴィスはデビュー前に一緒に地方を回りコンサートをしていた仲。音楽好きの4人が集まって自然とセッションが始まりました。’スター’エルヴィスを中心として。

今回改めて確認すると、私は「ミリオンダラ・カルテット」のCDを二つ持っていました。
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左側が最初に購入したもので、右側が後に買い直したもの。どう違うかというと、曲数と曲順が違います。左は聞きやすいように、実際のセッションとは違う曲順で紹介されていて、全41曲。といっても最後の'Elvis says goodbye'は曲じゃなくて、みんながそれぞれ「じゃあな」とか、がやがや言っているのが入っているだけ。でもファンにとっては貴重な音源。エルヴィスが'Thank you, sir. See you' なんて言っているのがはっきり聞こえると、嬉しくなります。右側のCDはThe Completeとあるように、6曲増えて,全47曲。4人で歌った曲も実際と同じ順番に並べられています。

4人は思いつくまま、いろんな曲を歌っています。エルヴィスはヒットしたばかりの「冷たくしないで」を「ラスベガスでこんなふうに僕の真似をして歌っている奴がいたよ。僕よりずっとうまくてね。。」なんて言いながら、そのそっくりさん(?)の真似をしたりしています。エルヴィスが歌いだすと自然にみんながコーラスをつけるのがすばらしい。選ばれた曲として一番多いのが、みんなの共通項のゴスペルでしょうか。例えばこんな感じです。2曲目にエルヴィスがひとりで歌うのはカントリーです。エルヴィスはカントリーも大好きでした。

エルヴィス、ご機嫌でギターをかき鳴らし歌ってます。
この曲も大好きなので、紹介させてください。

この曲は、私がHNをいただいたジューン・ファニコさんにエルヴィスがよく歌ってあげていたという曲で、私も大好きな曲なんです。ジューンさんとエルヴィスについてはこちらの日記に書きました。まさにこの「ミリオン・ダラー」セッションが行われた時も、ジューンさんはエルヴィスと’つきあっている’と思っていたはずなので、罪な人ですね~、エルヴィスは。

そしてミュージカルの中でもよかったのがこの'Peace in the Valley' ハーモニーが美しかったです。紹介する動画は ミリオンダラー・カルテットの音源とエド・サリバン・ショーに出演した時の音源がミックスされています。エド・サリバンの時は、コーラスはいつものジョーダネアー、ミリオン~のときは主旋律がエルヴィスでコーラスがカール、ジェリー、なのでしょう(多分ジョニーはいない)。人数少ないけれどきれいです。


さて、しかし、ミリオンダラーだ、奇跡のセッションだ、と言われても私たち日本人にはあまりピンときませんね。エルヴィス以外の3人は、普通の、音楽にとりわけ詳しくない人たちにとっては、あまり知られていないのではないでしょうか。実は私も、エルヴィスファンになる前は知りませんでした。ジェリー・リー・ルイスのヒット曲、「火の玉ロック」を聞いたときは、どこかで聞いたことあるなあ~とは思いました。


ジョニー・キャッシュのことは、エルヴィスファンになってから名前は知っていましたが詳しいことは全く知りませんでした。だからこそ、2005年にリヴァーの弟のホアキン・フェニックス主演で、映画「ウォーク・ザ・ライン」が公開されたとき、何はおいても、と劇場で鑑賞しました。低音と黒い服が特徴。TV番組「刑事コロンボ」げにゲスト出演したこともあります。'I Walk the Line'はこちら。'Folsom Prison Blues'はこちら

カール・パーキンスについては、私は、エルヴィスに「ブルー・スウェード・シューズ」を取られちゃって、かわいそうな人、という印象です。もともと、この曲はカール・パーキンスの曲で、いい曲ができたね、ということで、これからプロモーションをしていこうという時に、事故に遭って入院してしまい、エルヴィスが歌うことになったのです。そして大ヒット。まあ、エルヴィスだからヒットしたのかな、ってのもありますが。カール・パーキンスの「ブルー・スウェード・シューズ」はこれ。エルヴィスはこれです。

この4人の中で存命なのは、ジェリー・リー・ルイスだけ。エルヴィスと同じ、1935年生まれなので、今年77歳ですね。まだまだ~、です。

この写真に映った4人は、まさか、将来この音源がレコードになりミュージカルになるなんて思ってもいなかったでしょうね。 そういえば、私、こんなのも持ってました。
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もう、パンフレットのたぐいは買うまいと思っていたのに、ついつい買ってしまった。友人が売店のお兄さんに聞いたそうですが、パンフレットデザイン担当の方(多分そのお兄さん)がサン・スタジオまで出かけていき、イメージをふくらませでデザインを考えたのだとか。2000円なり。
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裏はこんなのね。トートに書かれている文字はエルヴィスの取り巻きの一人ジェリー・シリングのサインです~。
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by oakpark | 2012-09-14 20:44 | ELVIS | Comments(6)

Commented by yaya at 2012-09-15 22:18 x
6日に行って来ました。
サム・フィリップスが主役のようだったけど、それにしては役者の雰囲気が実際とは違ってましたね。

>キャッシュ
デレク・キーリングさんほんとにいい声でしたね~♪
I Walk the Lineで手拍子打ったら周りがシ~ンとしててちょっと恥ずかしかったわ(笑)
終わった後ルイス役と女性と3人でロビーに出てきてくれたので近くで写真撮って来ました~(笑)

ELVISの出番が意外に少なくてちょっとがっかり。
で、改めてELVISの魅力は声なんだと再認識しました(。_。;)

あの有名な4人の写真のピアノの右側に女性が写ってますが、それがあの彼女なんですかねぇ。。。悪いけど彼女の歌のとき少し眠ってしまいました(。_。;)
Commented by June at 2012-09-15 23:01 x
♪ yaya さん

やはり行かれていたのですね~。
似ているかどうかでいくと、誰も似ていませんでしたね。ジェリー・リー・ルイスがまだ一番近いかなあとは思いました。普段、インパーソネーターを見慣れているので、違うなあ~と思いましたが、途中から、これは別物で、エルヴィスが主役でもないと考えると、楽しめました! みなさん、ミュージカル俳優のようで、歌はうまかったし、私は満足でしたよ~。

私は4列目だったのですが、周り、ノリが良かったです。逆に、みんなこんなマイナーなのよく知ってるなあと思いました。土曜日だったせいもあって男性が多かったです。終わってから出てきたのは、ルイス役とエルヴィス役でした。キャッシュ役を見たかった!

>声
キャッシュ役の俳優さんにエルヴィスをやらせたかったなあ~。

そうそう、この写真、本当はマリリン・エヴァンスがピアノに座っているのですよね。

同じ日に行った友達が(エルヴィスファンじゃない)、「ミリオンダラー」のことを全く知らず、最後に出てくる写真も出演者の写真だと思っていたので、説明するために頑張ってこの日記書きました!
Commented by そしてごっどはんど at 2012-09-18 12:26 x
>Elvis has left the building
コレ、ウケました(笑)

>ジョニー・キャッシュ役の俳優さん
「Sixteen Tons」の低音がカッコ良かったですね。
実際にキャッシュがこの曲をレコーティングしたのは
もっと後のことだったと思いますが。

>ジューン・ファニコさん
ジューンといえば、たしかキャッシュの奥さんは
ジューン・カーターですね。

>TV番組「刑事コロンボ」
私がキャッシュを知ったのはこの番組でした。


と、キャッシュ寄りのコメントになってしまいましたが、
もちろん私はエルヴィス推しです。
Commented by June at 2012-09-19 00:40 x
♪ そしてごっどはんどさん

>Elvis has ~
観客からもちょっと笑いが起きていましたね。笑った人はみんな生粋のエルヴィスファンだと思いました。だって、わたし、ファンになりたての頃はなんのことかわかりませんでしたから。

>Sixteen tons
そんな曲ありましたっけ? あまり覚えてないですが、キャッシュののちの曲なのですね。いや、ほんと、この方低音が素敵でしたわ~。

>ジューン・カーター
そうですね~。当時はジューンという名前が、流行りだったのでしょうか? あ、そういえば、私のいちおしのTVドラマ「ホワイト・カラー」にもジューンって出てくるわ~。年配の女性です。日本でいうと「節子」みたいな感じかな。

>刑事コロンボ
キャッシュの演技力はどうでしたか? 歌手はみんな演技できるのかしら。

>エルヴィス推し
もちろん、わかっております~(笑)
Commented by ETCマンツーマン英会話 at 2012-11-30 23:07 x
こんにちは。ジョニーキャッシュの自伝映画の中のサム・フィリップスの言葉がとても印象に残っています。ミュージカル「ミリオン・ダラー・カルテット」観たかったです。来年早々彼の自伝が出版されるようなので、ぜひ読んでみたいと思いました。
Commented by June at 2012-12-04 10:28 x
♪  ETCマンツーマン英会話 さん

記事を読ませていただきました~。
サムは、何が人々の心を打つのか、心得ていたのでしょうね。人々の心を打つ音楽でなければ、売れないということも知り尽くしていたのでしょう。 エルヴィスが見出されたのも、あらかじめ準備されていた曲ではなく、即興で気分のまま歌った曲(That's All Right Mama)だったことは有名な話です。 南部なまりは、アジがありますね~。

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