映画「チェ 28歳の革命」   

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キューバのこともキューバ革命のこともほとんど知らなかった私は、「モーターサイクル・ダイアリーズ」(2003)を観てチェ・ゲバラに興味を持ちました。アルゼンチンの比較的裕福な家庭に生まれ、重度の喘息を患いながら、医師を目指して学問に励んでいた青年を何が革命に突き動かしたのか。この映画では、そのあたりのヒントをがうかがい知れるような、ピュアで正直で大胆な若者であるゲバラが描かれていました。

そして今回の「チェ 28歳の革命」では、キューバ革命そのものが描かれています。1955年、反政府運動の失敗からメキシコに逃れ潜伏していたフィデル・カストロに出会い、革命軍をたちあげ、同士とともにボートでメキシコからキューバに上陸し、ジャングルの中を進軍、サンタ・クララを陥落させ、ハバナに向かう1958年までです。

地味な映画です。派手なシーンも、盛り上げるための音楽もなく、ただ淡々とドキュメンタリータッチでお話が進みます。荒い白黒画面で1964年の国連総会でのゲバラの演説とインタビュー・シーンを見せ、1958年のジャングルの中での戦闘シーンと交互に映し出します。この、違う時代を交互に見せるという手法は、「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」でも使われていました。ただ、「エディット・ピアフ」のほうは、昔の映像と晩年の映像の因果関係はあまり感じられませんでしたが、この映画では、1964年のインタビュアーが「あの時はこうでしたね」と過去を振り返るようなことを尋ね、カメラが昔(1958年)に戻るということも何度かありました。それにしても、ある程度キューバ革命についての知識があるか、よほどキューバ革命に興味がないと、なかなかわかりづらい、集中しにくい映画かもしれません。何の説明もないのですから。カストロのことも「フィデル」だし、ゲバラは「エルネスト」ですから。知らないで観ると、だれのことや~っとなりますよ。それに、革命軍と政府軍、革命軍でもゲバラたちの率いる密林軍と都市軍(反政府ということでは同じだが、誰が率いているのかはわからなかった)の区別もつきにくい。え?この人、味方だったっけ?というような場面も多々ありましたねえ。 これがスティーブン・ソバダーク監督の撮り方なのでしょうか。そういえば、1950年代のアメリカで赤狩りに立ち向かったジャーナリストを描いた「グットナイト&グッドラック」も興味深いけれど地味な映画だった。

しかし、なんというか、地味だけに不気味というか、静かな迫力のある映画なのです。カメラに語らせるとでもいいましょうか。観ているうちこちらも一緒に密林の中を進軍しているような気分になってしまいそうでした。武器をととのえ、敵から身を隠しながら、少ない人数の部隊で効率よく敵を倒しながら戦いを進めていく。けが人が出ると、ゲバラを含め医術の心得のある隊員が応急治療をし、急ごしらえの担架で、5~6人がかりで担いで移動しなければならない。ゲバラはまた、戦闘をしていないときには、読み書きのできない隊員に勉強しろとはっぱをかけたり、無知から生まれた隊員同士のいさかいを仲裁したりもする。裏切り行為を行った仲間を処刑しなければならない辛いこともある。革命だ、戦争だ、とはいえ、日常の営みもある。そのあたりがとてもリアルで、普通の戦争映画と違っているところかもしれないと思いました。

ゲバラを演じた、ベネチロ・デル・トロが本物によく似ていました。といっても映像でしかゲバラを見たことはないのですが。実際より、少し老けすぎて少し大柄すぎるかもしれないけれど。この写真なんか、ゲバラ本人みたい。
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Tシャツなんかにプリントされているゲバラ本人の有名な写真はこちらです。
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で、すっごくミーハーなんですけれど(笑)、フィデル・カストロの弟のラウル・カストロを演じた俳優さんが「ラブ・アクチュアリ」にも出ていて、ちょっと気になっていた、ロドリゴ・サントロというちょーハンサムな人だった。
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え?フィデルのほうはって? うん、似ていたと思いますよ~(サラリ)

さらにミーハーなんですけれど、この映画を観て、以前から気になっていた、今年流行のベレー帽を買ってしまいました。ベレー帽って、似合わないけれどなんとなく気になるアイテムなのですヨ。私の人生で唯一の制服、幼稚園の制服がえんじ色のベレー帽でした。中学の修学旅行ではベージュのベレー帽を親に買ってもらってかぶりました。それ以来かぶったことないけれど、なんとなく今年気になるんです。。。買ったのは黒のベレー帽です。たんすの肥やしになりそうだけれど、所有するだけでいいのです、はい。
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映画の終わり方はいかにも唐突でしたが、ゲバラの人となりを如実に表すエピソードなのでしょうね。興味深いエンディングだと思いました。原題の「The Argentine」(アルゼンチン人)が意味するところも気になります~。映画の中でも「あの、アルゼンチン人が。。。」というせりふが出てきましたが、キューバ人でなかったからこそ、という「なにか」があったのでしょうね。
いいことも悪いことも。

近所の主婦仲間4人で観にいきましたが、明日から公開のパート2、「チェ 39歳別れの手紙」も一緒に行こうということになりました。後半は死んじゃうから辛いんですけれどね~。

by oakpark | 2009-01-30 22:34 | 映画

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