映画「モーリス」 (Maurice 1987)   

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ジェームズ・アイボリー監督   ジェームズ・ウィルビー、ヒュー・グラント、ルパート・グレイブス

今回のカルチャーセンター映画講座のテーマは「イギリスの伝統を伝える映画」です。一回目は「炎のランナー」、2回目の昨日は「モーリス」でした。
私は20代のある時期、イギリスに憧れ、イギリス英語に憧れていたので、今回取り上げられている映画はほとんど過去に観ています。ところが、当時の印象と、20年の時を経ていろいろな映画を観たあとの現在の印象とではかなり違うみたいだと気づきました。

興味深いことに、「炎のランナー」は昔は大好きだったのに、今回観てみると、映像や音楽やファッションはすばらしいものの、映画の作り方やストーリーは陳腐だと感じました。特に後半、感動を駆り立てるためか、やたらスローモーションが多く、結末を知っているだけに退屈してしまいました。 でも、このテーマ音楽はだ~いすき。独身の頃勤めていた学校の下校の音楽でした。優雅で壮麗で、沸き立つような波打つようなメロディーと音が大好きです。今でもなんとなく「あ~、もう帰らなきゃ」と少し寂しい気分になったりもします。

で、「モーリス」ですが、「炎のランナー」と対照的に、今回見ても、とても感動したし、同じところで涙が出てしまいました。実は、かなり好きな映画なのです。なのに、置いてないショップも多いようで残念だわ。うちの近所にはありましたが。映画サイトなどを読むと「美しい男子がたくさん出てくるゲイの映画」などと解説してしまっているものもありますが、決してそれだけではない!もっとふか~~い映画だと思います。「人を好きになること」がどれだけ純粋で、そして辛いものか考えさせられます。苦しんで、苦しんで、苦しんで、決して世間にも認められない「愛」。でも私は、それでも、「人を好きになること」はすばらしいと思います。絶対、絶対、人を憎むより、好きになることのほうがすばらしいに決まっている。。さらに、そこまで好きになれる心を持っていることはすばらしい、と思えます。理屈じゃない、打算じゃない、本能から「好きになる」ことのすばらしさを教えてくれる映画です。

ジェフ先生の授業では、ギリシャの教えと、キリスト教の教えの違いや、この映画の舞台がエドワード朝で、その前のヴィクトリア朝の影響があることなどの説明がありました。また、イギリスでは、1860年までは同性愛は死刑だったことや、合法になったのは1967年だったということも教えていただきました。原作者のE.M.フォスターは1914年にこの作品を書いていましたが、出版されたのは彼の死後の1970年だったというのはそういった事情もあるそうです。同性愛者の結婚が新聞で報じられたり、ニューハーフと呼ばれる人たちもたくさんテレビに出ている現在ではあまりぴんと来ないかもしれませんが、そういったバックグラウンドを知った上で映画も観ると、また、緊張感が増すように思います。

こういうストーリーです。(好きな映画なので、少し詳しく書いてしまいます)
ケンブリッジ大学に入学した中流階級出身のモーリス(ジェームズ・ウィルビー)は、上流階級出身のクライブ(ヒュー・グラント)と友達になります。知識も豊富でピアノも上手なクライブへの憧れに似た想いを抱くモーリス。片やクライブのほうも、自分にはない素直な快活さを持つモーリスに好感を抱きます。夏休みを終えて寮で再会した二人は、会えなかった寂しさから喜びを爆発させます。口うるさい母親や妹の愚痴を言うクライブの話を聞いてやり、慰めるやさしいモーリス。ほんと、モーリスがやさしいのよね~。プライドが高く孤独なクライブはモーリスを独占したいと思う。でも快活なモーリスには友人もたくさん。いつも部屋にどやどやと友人が詰めかけてくる。あせるクライブは偶発的に(と私は思った)、モーリスに告白してしまう。驚くモーリス。拒絶されたと思ったクライブは「なかったことにしてくれ」という。ところが、やさしいモーリスは、自分も君を想っていたという。

このあたりの流れがうまいな~。男女の恋愛でも、こういう過程を踏みますよね。メールの発達した今はどうか知らないけれど、少なくとも昔はそうだったなあ。お互い思っているのがわかっていても、相手にその気持ちを伝えるのって、まさにタイミングですよね。自分で言おうと思っていたときに言えなくて、なんでもないときに急に言ってしまったりするのかもしれない。

この段階ではモーリスはまだ、それほどでもなかったと思うのですよね、私は。やさしいからクライヴの気持ちにこたえようとしたのだと思う。でも、その後、二人の気持ちはどんどん寄り添っていく。特に素直でまっすぐなモーリスは、どんどん、どんどん行ってしまうのですよね。

そして、モーリスは授業をサボってクライブとピクニックに行った際、学長に見つかり、謝罪文を書かなかったという理由で放校になります。このとき、なぜクライブにはお咎めがなかったのか不思議。やはり家柄の違い、家の力の違いというのもあるのかな。モーリスは父の仕事を継いで株屋になり、クライブは弁護士になるための勉強を始める。このあたりも対照的だとジェフ先生。当時のイギリスではお金にまつわる仕事に携わる人は「なりあがり者」ということで、最上級の尊敬は集めなかったそう。昔からの土地や家柄のある人たちが本当の上流階級で、彼らは政治家や法律家になることが多かったそうです。

社会人になるべく一歩を踏み出しながらも、プラトニックではあるが二人の深い関係は続いていた。ところがそんな折に事件が起こる。ケンブリッジ時代の友人が、身分の低い兵士を金で買おうとした罪で逮捕され、6ヶ月の重労働を課せられ、社会的な制裁も受けることになってしまった。これは、私も思ったのですが、オスカー・ワイルドをモデルにしているのではないかということでした。オスカー・ワイルドは「幸せの王子」や「サロメ」を書いたヴィクトリア朝時代の作家ですが、妻子がありながら男性と恋に落ち、しかも身分が下の少年と関係を持ち、裁判にかけられ、それまで築いてきた社会的な地位をすべて失い、失意の中46歳で亡くなりました。以前にオスカー・ワイルドの本を読んだときに知ったのですが、同性愛も重い罪でしたが、それ以上に身分が下の者と関係を持つというのは当時は考えられないほど重い罪だったそうです。

その後のモーリスとクライブの運命はほんとかわいそう。
クライブは自分の将来を考えて女性と結婚し、モーリスはその大学時代の友人と同じことをしてしまうのです。でもね、モーリスは抵抗するのですよ。自分は病気だと思い、医者に相談したり、催眠療法に挑戦したり。ボクシングを教える仕事をして気を紛らそうとしたり。そのあたりが痛々しく、かわいそうだなあ~。

今やほとんど三枚目のようになってしまったヒュー・グラント(私と同い年、誕生日一日違いよ♪)が、まっこと美しいけれど、やはり特筆すべきはジェームズ・ウィルビーの熱演だと思う。純粋でまっすぐなモーリスの心情をよく出していたなあ。妹に嫉妬して怒り狂う場面も秀逸。それに彼は体の線がとってもきれい。特に首から肩にかけてのラインがきれいで、「雨に歌えば」のドナルド・オコナーを思い出した。

最後のシーンが泣ける。。。
あの、まだ無邪気な学生だった頃のモーリスが、「来いよ!」といって手を振るあのシーンですよ。かわいそうな、モーリス。でも、それで幸せならいいのかな。


いや~、名作だと思います。

by oakpark | 2008-11-01 23:12 | 映画 | Comments(6)

Commented by hiromi at 2008-11-02 15:56 x
おー、面白そう!
探してみるわ。
Commented by June at 2008-11-02 21:11 x
★ hiromiさん
ぜひ観てね~。感想聞きたいです♪
当時はかなり話題になった映画だけれど、今は置いているお店とそうでないお店があるみたい。ビデオ(or DVD)も修正されたのと無修正のがあるみたい。私が借りたのは無修正で、ちょっとびっくりしました。
Commented at 2009-01-24 21:53 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by oakpark at 2009-01-25 22:56
♪ KELLY さん

はじめまして!
中学2年生なのですか!「モーリス」の良さがおわかりになるなんて大人だわ~。「人を好きになること」ってすばらしいことですよね! どきどきする気持ち、会いたい気持ち、苦しい気持ち。そのあたりがよく出ていた映画でしたよね~。
お互い、素敵な映画にたくさん出会えるといいですね♪
Commented by 2372 at 2016-12-16 13:01 x
モーリスいいですよね~
大好き内がです。

若き日のヒューはため息が出るほど美しい。
Commented by oakpark at 2016-12-16 22:56
♪2372さん

コメントありがとうございます。
この映画、名作ですよね。 三枚目のヒュー・グラントもいいですが、この映画では本当に美しいですね。そして、今も活躍していて、息の長い俳優さんでもありますね。

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