映画「尼僧物語」( The Nun's Story 1959)   

オードリー・ヘップバーン主演の映画「尼僧物語」を観ました。
地味な映画でしたが、とても感銘を受けました。
物語が終わった瞬間に私の口から出た言葉は「なるほど~」でした。

監督はフレッド・ジンネマン監督。私は「地上より永遠に」が印象に残っています。ほかの出演はピーター・フィンチなど。

とにかくなんといってもオードリー・ヘップバーンが美しい。オードリーなくしてこの映画は成り立たなかったんじゃないかと思うほどでした。
映画の前半部分は、普通の女性が修道院に入り、厳しい戒律を学び、修道志願生から正式な修道女になっていく過程を描いた映像が延々と続きます。この時点で私は「この映画は’楽しむ’ためのものではなく’知る’ためのものだな」と思いました。「これ、いつまで続くんだろう~。もしかして最後まで?」と心配になりました(笑)。想像はしていましたが、尼僧になるためにはこんなに厳しい修行を積まなければいけないのですね。髪を短く切り、顔以外のすべてを白い布に包みこみ、手も必要なとき以外は袖の中に隠します。しゃべってはならず、他人の体(肩など)に触れてはいけない。用事があるときは袖を少し引っ張って知らせる。鏡(窓ガラス)に自分の姿を映してはいけない。神に仕えるためには自我を捨て世俗的なものはすべて切り離さなくてはいけない。英語でdetachment という単語を使っていました。女性たちが花嫁衣裳を着て薬指に金の指輪はめてもらうシーン、たぶんイエス・キリストと結婚するということを意味しているんだと思うのですが、それを見てなんだかジーンと来てしまいました。

それにしてもオードリーの美しさです! はっきりいって、この前半部分は、修道院の内部を知るという楽しみ(?)以外はオードリーの美しさに目を楽しませるしかない!
e0123392_19223285.jpg

e0123392_19232365.jpg


特に長い髪をばっさり切るシーンは息を呑む美しさ。伏せた目から、こちらがそう感じるだけなのかもしれないけれど、現世と決別する強い意志、そしてあきらめ、悲しみ、などが伝わってきました。「ローマの休日」でも髪を切るシーンがあったけれど、また違う美しさなんです。物語としては後半が面白いのですが、この前半部分こそ、オードリーの静謐な演技からにじみ出る存在感が光っていたように思います。でも、カラーでよかった。モノクロだと寝てしまいそうでした。1959年はカラーと白黒の混在期ですから。

さて後半部分は見所がたくさんありました。
実はガビー(オードリー)は、父親が有名な医者で、父から医術の手ほどきを受けたため、卓越した医学知識と技術を持っているのです。父と同じようにアフリカのコンゴで、現地の人たちのために働きたいと夢を抱くガビーですが、試験でわざと悪い成績をとって自分を犠牲にし、同じ志をもつ年上の尼僧に道を譲れと尼僧長に言われてしまいます。傷つくガビーですが、その助言に従い、代わりに派遣された精神病院で精一杯任務を全うしようとします。しかし、「自尊心を捨てることができない。謙虚になれない」と自分を責めるガビーでした。その後念願のコンゴに派遣され、喜ぶガビーですが、希望した現地人ではなく、ヨーロッパの白人の医療補助のほうに回されてしまいます。
このコンゴロケがすばらしかったです。1959年にもこんな映画が撮影をされていたのですね。あ、でも「アフリカの女王」も1951年だからもっと前か。現地ロケは大変だったでしょうね。「アフリカの~」では、さらっと現地の人を写すだけの映像で、後は主演の二人にカメラが集中していましたが、この映画では、ストーリーには直接関係のない現地のさまざまな年齢層の人の表情をいくつかアップにしてリアル感を出しているところなど、現在にも通じる撮影手法だなあと感心しました。どこの国でも子供はかわいいですね。ガビー(オードリー)が子供を抱きあげてにっこりするシーンは、将来の彼女の生き方を予見しているようでした。

そして、ここで登場するのが、ピーター・フィンチ演じる天才医師。このピーターとオードリーの微妙な距離感がよかったですね~。お互いの力量を認め合い、次第に惹かれていく二人。ぶっきらぼうな無神論者の医師ピーターと、厳しい戒律によって最小限の会話しかすることができないオードリー。他人とかかわること、他人のために働くことの喜びに目覚めながら一方で自分を諌めようとするオードリーは、徐々に自分の決めた道に疑問を抱くようになります。神への従順、年上の尼僧への従順。すべてにおいて従順(英語ではobedience)を強いられる生活がほんとうに自分の定めなのか。

この後オードリーは、またもとのベルギー国内の修道院に戻されます。そこで戦争が勃発。敵をも愛すべきとの思いにも苦しめられたオードリーでしたが、父の死をきっかけにある決心をします。

いろいろ考えさせられる映画でした。
人の定めとは何か、とか。
自分を犠牲にすべきというキリスト教の教えとか。

そういえば、私が通ったプロテスタント系の学校で、学校行事で三浦綾子の「塩狩峠」という映画を観たことがありました。キリスト教徒の男性が暴走した電車を、自分の身を投げて止めたというお話。私としてはかなり衝撃的でした。で、その次の年もキリスト教関連の映画をやるのかなあ、と思ったら今度は「アラビアのロレンス」だった。 これも衝撃的だったなあ。

さてさて、「尼僧物語」に話を戻すと、コンゴのシーンではハンセン病の隔離施設が出てきたことも印象深かったです。ハンセン病については、、以前に見たチェ・ゲバラの若い頃を描いた「モーターサイクル・ダイアリーズ」でも取り上げられていました。そして思ったことは、昔は、このように恐ろしい病気の治療に関わるのは、この映画で描かれているような信仰心に守られた人たちでないと難しかったのかもしれないということ。病気の原因や感染経路など、詳しいことは何もわかっていなかったのでしょうから、よほどの強い精神的支柱がないと無理だったのではないかなあ。ちょっと調べてみたのですが、この映画に出てきた神父さんはこの、ベルギー出身のダミアン神父を参考にしているのかもしれないと思いました。

また、コンゴのシーンで、オードリーたち尼僧の助手役をするのはキリスト教徒ではなく、現地の宗教を信じている若者です。その証に御神体のネックレスを首からぶら下げています。しかしある事件をきっかけにその首飾りをはずすシーンでは、なんだ、やはり、キリスト教礼賛映画かな、と思ったのです。でも、最後まで観るとそうではなかった。観客に問題提起をしながら余韻を残す、良質の映画だと思いました。だから、「なるほど~」とつぶやいちゃったんです。

この映画の撮影中のオードリーのスナップ写真もありました。帽子がおしゃれでかわいいですね。
e0123392_205347.jpg

e0123392_20657.jpg


最後にもうひとつ。オードリーのお父さん役の俳優(ディーン・ジャガー)は、エルヴィスの映画「闇に響く声(Kinc Creole 1958)」でエルヴィスのお父さん役を演じていた俳優でした。エルヴィス映画関連の俳優さんをほかの映画で見つけることも、こういう古い映画を観る楽しみなんです♪

by oakpark | 2008-09-10 20:06 | 映画 | Comments(16)

Commented by Youさん at 2008-09-10 21:23 x
nandakandaからたまにチェックしてと頼まれた者です。nanさんの足もとにも及びませんがこよなく映画を愛する人間です。nanさんのご推薦をご覧になった訳ですね。12、13時間の時差があるはずですが伝えておきます。恐らく返信で「次はアンネよ」と入りそうです。では。
Commented by Youさん at 2008-09-11 00:40 x
nanさんからさっき着信しました。以下原文の通り。<お早うございます。そうですか、ご覧になったですか。リストがいっぱいだから半年くらい先かなと思っていました。薦めて良かったです。Youが言うようにアンネではなく食わず嫌いでなく切腹はいかがですか?。45年くらい前の今頃ベネチアで受賞した作品だったかな。こちらは秋ですね。季節の変わり目、どうか皆様ご自愛のほど。Youさんも、な。
Commented by June at 2008-09-11 11:36 x
★ You さん

こんにちは!はじめまして!
そうですか。nandakandaさんのお友達でいらっしゃるのですね。そうなのです。お勧めの映画を観てみました。ありがとうございましたとお伝えください。この映画、「ベンハー」「アンネの日記」とその年のアカデミー賞を争った作品だそうですね。「アンネ~」は一応見ているので、次は「ベンハー」なのかしら~?あ、でも鳩のシーンが思い出せないのでもう一度見なきゃいけないかな。

nandakanda さんからは「切腹」ですか。今度レンタルショップで探してみます。ベネチアで受賞となると、「知る人ぞ知る」といったタイプの作品なのでしょうね。 さて、きょうは、カルチャーセンターの宿題の「フルメタル・ジャケット」を見なければならない。きつそうだな~。
Commented by Youさん at 2008-09-12 09:38 x
Youです。15日(月)20時からBSで「ベン・ハー」ですよ。
Commented by June at 2008-09-12 09:54 x
★ Youさん

ありがとうございます!
早速カレンダーに書き込んで録画するようにします。
そういえば、前にもnandakandaさんに薦められた「捜索者」を録画しました(まだ観ていないが)。テレビはただだからありがたいです!
Commented by Youさん at 2008-09-12 11:46 x
nanさんには申し訳ないけどコメント入れちゃいます。「ベン・ハー」でリッチ&セレブだった「ハー一族」は屋根瓦が原因でプアーになりハンセン氏病にかかってしまった母と妹にベンが洞窟で再会するところはハンカチなしでは・・。あんまり言っちゃまずいかな。
Commented by June at 2008-09-12 23:25 x
★ Youさん

コメント大歓迎です♪

そっかあ。ベン・ハーというのは名前なのですね。チャールストン・ヘストン主演ですね。亡くなったときの新聞記事で「マイケル・ムーア監督の映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』で全米銃協会会長として登場し、すっかり評判が悪くなったけれど、映画での功績をもっと評価すべき」というのがあり、まさに私がそうだったので、いつか「ベン・ハー」と「十戒」を観なければ、と思っていました。良い機会です。
しかし、今調べると、240分もあるのですね!
私、90分くらいの映画が集中力が途切れなくてちょうど良いので、何回かに分けないと見れないかもしれません。

へ~。この映画にもハンセン氏病のことが出てくるのですね。当時の最も恐ろしい病気だったのかしら。
Commented by Youさん at 2008-09-14 12:07 x
ダミアン神父、勉強になりました。ありがとうございます。ハンセン病は邦画の名作「砂の器」では真っ向捉えていて、ただの刑事物ではありませんよ。丹波刑事が隔離され生活保護を受けた加藤を見舞い写真を見せる。「こんな奴知んねぇー」とかばう加藤。ハンカチ10枚あっても足りまシェーン。nanさんが一旦帰国で今から成田に迎えに行くところです。
Commented by nandakanda46 at 2008-09-14 20:22 x
juneさんコンバンハ。先程帰りました。さて、尼さんで思い出しました。さまようと闇にでエルヴィスが共演したドロレス・ハートは闇と同監督の「剣と十字架」で余程感化されたか女優業を廃業し尼僧に。かなり高いポジションまで行ったようです。youさんの推薦「砂の器」、納得ですね。
Commented by June at 2008-09-15 00:26 x
★ Youさん

ダミアン神父のことはハンセン病を調べていると出てきました。私も勉強になりました~。
「砂の器」ですか! 松本清張ですね。これまた私の弱いところでございます~(実は弱いところだらけ)。 昔、勤め先の同僚が薦めてくれた映画でしたがまだ見ていませんでした。その同僚、遠藤周作著の「私の棄てた女」も薦めてくれて、そちらは読みました。似たような傾向っぽいですね。ハンカチ10枚ですか! あくる日に何も幼児のないときに見ないといけません。すぐ目が腫れる体質なので。
Commented by June at 2008-09-15 00:38 x
★ nandakanda 46 さん

お帰りなさい~。 そうそう、わたしもずっとドロレス・ハートのことを思っていのですよ。彼女もこんなことをしたのかなあ~と。かわいい女優さんで大好きでしたのに。 エルヴィスとふざけているオフショットの映像も残っています。

>同監督
「カサブランカ」の監督でもあるのですね!

>「剣と十字架」
この映画がきっかけだったのですか! ずっと気になっていたので。どうしてなんだろう~、と。ありがとうございます! 今度渋谷で探してみたいです。ドロレス・ハートってまじめで純粋な人だったのでしょうね。
Commented by nandakanda46 at 2008-09-15 16:56 x
お父さん役がディーン・ジャガー、闇のお父さん役、juneさんはさすが良くご存知で。わたしゃ忘却の彼方、ぜんぜーん思いだせまシェーン。そうだっけな~。
Commented by nandakanda46 at 2008-09-15 21:08 x
闇に響く声、うん十年振りにただいま鑑賞を終了。D・ジャガーなんでYouさんとさすがjuneさんはマニアックと感服!!。私、個人的には惚れ直しかなりのランクで「燃える平原児」よりひょっとして良いな~。
Commented by oakpark at 2008-09-15 23:09
★ nandakanda 46 さん

>良くご存知で
ちがうのですよ。IMDbで調べたのです。ただ「尼僧物語」を観ているとき、う~~ん、どこかで見たことのある顔だなあ、う~~ん。あ、「闇に響く声」だ!と思い出したのです。苦悩に満ちた父親という役柄が似ていたことも幸いしました。
「闇に~」はエルヴィス本人も一番のお気に入りと聞いたことがあります。入隊直前で、自分のロック歌手としてのキャリアもこれでおしまいかと思い、除隊後は歌手がだめなら映画俳優の道で生きようと思って気合を入れて撮った作品とか。
エルヴィス映画祭、前回の「ブル・ハワイ」の前がこの映画でした。大画面で見るとまた違った発見があってよかったです。 最後のAS Long As I Have You を歌うシーンなんて、涙でそうですものね♪
Commented by 教会の切手 at 2009-02-27 17:19 x
オードリー扮する尼僧の姿に、真の宗教者の姿を見る思いがしました。現実の教会では、郵政事業民営化など政治的なことで前に出るシスターもいます。また、自己顕示欲の異常に強い人に、ついてまわっているシスターもいます。それらのシスターは一種マドンナ気取りですが、オードリーの場合は違います。可憐さに自己陶酔していません。父親をあまりに思いすぎたことを罪の告白として、吐露するシーンによく出ています。代表的な尼僧の映画として後世語り継がれるでしょう。
Commented by June at 2009-02-27 21:13 x
♪ 教会の切手さん

はじめまして。
私はこの映画を観て、尼僧の生活を知りました。時代的なこともあり、今では多少は違っているのかもしれませんね。 地味が映画ですが、オードリーが演じたことで、華やかさや存在感が感じられるのだと思います。観終わって私が思ったことは、「オードリーでこそ」の映画だなということです。ある意味、オードリーの代表作といってもよいのかもしれませんね。

<< 映画「フルメタル・ジャケット」... 45rmpのシャツジャケット♪ >>