映画『暴行」から『羅生門」   

とりだめしていたビデオの中から、ポール・ニューマン主演の「暴行」(the Outrage 1963)という映画を観ました。
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一人の男が殺され、その犯人としてメキシコ人の盗賊(ポール・ニューマン)が連れてこられ尋問を受ける。ところが、盗賊も、殺された男の妻(クレア・ブルーム)も、殺された男も(死に際にインディアンに語ったという)、みんな言い分が違う。全員自分が殺したというのだ。人間というのはかくもうそつきなのだろうか。人を信じることは出来ないのだろうか、という映画。

調べてみると、この映画は黒澤明監督の「羅生門」のリメイクだということで、さっそく、やはりとりだめしていたビデオの中から「羅生門」(1950)を観ました。
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まず、両作品のストーリーの展開が全く同じということにびっくりしました。まあ、リメイクですから当たり前なのかもしれませんが、あまりにも同じすぎる。黒澤監督の作品がそれほどまでに尊重されていたからなのかしら。「羅生門」は、日本国内ではあまり評判が良くなかったけれど、ベネチア映画祭で金賞をとり、「クロサワ」の名を一躍世界にとどろかせた黒澤監督の出世作だそうです。たしかに、画面から伝わる緊張感、三船敏郎の正気と狂気の瀬戸際のような演技、京マチ子の幼女のようでもあり、妖怪のようでもある(ネコ娘に似ていた)表情は、当時かなりの衝撃を与えたのではないでしょうか。 メキシコなまりの英語をしゃべるポール・ニューマンもクールでかっこよかったけれど、三船敏郎って、こういう俳優さんだったのね、とびっくり。「天国と地獄」の山崎努みたいだった。狂気の一歩手前のような激しさで。黒澤監督がそう演じさせているのだろうか。
両作品を比較すると、カメラワークと女性陣のほうで差が出ていると感じた。京マチ子のことはあまり詳しくないけれど、私の父いわく、色っぽくて美しかったとのこと。この映画では、最初のショットでは、こんなにふっくらしていたのね、というほど幼い感じの表情だったが、後半、目をがっと見開き泣き叫ぶ姿は思わず画面から離れたくなるほど激しく妖艶だった。クローズアップが多かったせいもあるかもしれない。かたや「暴行」の被害者の妻役だった、クレア・ブルームは、なんと「ライムライト」のバレリーナ役の人。そういえば、激しい、舞台のような台詞回しは、「立つことができた!」と叫ぶときのあの感じを思い出させた。「ライムライト」のときは、なんと可憐でかわいいことよ、と思ったけれど、「暴行」では、ちょっとトウが立ってきたかんじ。美人だけれど、色気があまり感じられない。風が吹いただけで男を狂わせるような色気があったかどうか。。。厳しくてスミマセン。スカーレット・ヨハンセンだったら納得なんだけどな。

ややこしいけれど、この映画「羅生門」は、芥川龍之介の「羅生門」ではなく「藪の中」という短い小説が原作なのだそうです。「藪の中」も読んでみたくなりました。

by oakpark | 2008-05-11 23:50 | 映画

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