藤原正彦さんの本   

最近夫婦で藤原正彦さんの本にはまっています。わたしが最初に読んで面白いと思い、夫に勧めると夫も読み始めました。どこで笑ったか、どこで感じ入ったかを二人で話し合ったりするので、ちょっと夫婦の会話が増えました。今のところ読んだのは「若き数学者のアメリカ」「父の威厳 数学者の意地」「遥かなるケンブリッジ」です。売り上げ部数が260万部を超えたという「国家の品格」は二人して買ってしまいました。そして、夫のほうが一足先に読んでしまいました。夫は普段本はほとんど読みませんが、いざ読み始めると読むスピードが私よりずっと速いのです〈昔マンガの立ち読みで鍛えたらしい)。

私が最初に読んだ藤原正彦さんの本は「若き数学者のアメリカ」です。斉藤孝さんの「読書入門」に紹介されていたので、面白そうだと思い購入しました。読み始めてまず、ドラマティックでありながら流麗な書き出しにひきつけられました。事実だけを抽出すると、初めてハワイに行ったというただそれだけなのに、これだけ感動的に書くことが出来るなんて、この人は数学者というより〈数学者なんでしょうけれど)作家だなと思いました。

それと、ユーモアのセンスがいいです。私たち夫婦好みのセンスです。抑え気味の筆致でフッと笑わせてくれます。悪口で笑いをとることはしません。悪口めいたことを書くと必ずそのあとにフォローを入れています。でも、こうなんだけれどね、というかんじで。その自虐的なセンスに関西のノリがあるように思いました。関西出身の私たち夫婦には、その辺も好感が持てた理由です。さらに、文章にメリハリとリズムがあります。まじめなことが書かれている部分は鋭い分析と情報量に驚かされますが、次の瞬間には笑いのつぼにはまってしまったりします。面白いことが書かれていそうなところはなんとなく雰囲気でわかるのですが、来るぞ、来るぞ、と思っていてもやはり笑ってしまいます。

藤原氏の知識量と読書量は、本当にすごいです。数学だけでなく、文学、歴史、哲学、武士道や騎士道やイギリスの階級制度まで、ありとあらゆることをご存知のようです。生徒がイギリスのキングス・スクールの出身だと言うと「サマーセット・モームと同窓だね」と言い、あるイギリスの英文学者が「以前面白い日本人に会ったよ。チョーサーはすらすら読めるのに、ほとんど英語を話せなかった」と言うと、「アーサー・ウェイリーは源氏物語を上手に英訳したが、日本語は話せなかったらしい」と返す。 新田次郎と藤原ていの次男として生まれ、相当量の読書をこなしたのでしょう。私の知らない日本語が一冊の中にいくつか出てきたりもします。

先日新聞に藤原氏ご夫婦の写真が載っていましたが、奥様はとても知的な雰囲気の綺麗な方でした。これだから、藤原氏は女性に関する記述を大胆に書くことが出来るんだなあ、と合点がいきました。「さる教授から、出来は悪いがかわいい子がたくさんいるクラスの講義をお願いできないかと頼まれたが、正しいのは前半部分だけだった」というように。。。。。奥様は藤原氏のエッセイに再三登場し、笑いを提供してくださっているので、どんな方かなあと思っていました。想像以上に美人でびっくりしてしまいました。

テレビ出演は断っているそうですが〈奥様の仕事らしい)、講演か何かがあればぜひ聞いてみたいです。

by oakpark | 2007-09-28 22:34 |

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