本「さよなら コロンバス」   

用事で大阪に来ていて、1人でホテルに宿泊している。1人でホテルなんて何年ぶりだろう。開放感ありすぎて眠れなくなりそう。今はスマホという、おもちゃもあるしね。

もちろん、うちでも1人になれるけど、開放感が全然違う。家の中だと、家事や宅配や周りの生活音が気になるし、外に出てカフェなどで時間を過ごすときも、夕食の時間や子供の帰宅時間が気になる。すぐ現実に引き戻されてしまう。

だから、旅行に出た時こそ私は雰囲気が大事な小説を読むようにしている。今回選んだ、フィリップ ロスの「さよなら コロンバス」はまさにそんな感じの小説だ。劇的な何かが起こるわけではない。ただ、若い男女の出会いと恋愛、そしてその終焉を、ユダヤ人家族のコミカルさや身分違い(経済力違い?)から生じる歪みを絡ませながら描いた小説だ。

一瞬で恋に落ちる瞬間って、やはり肉体の外見からなんじゃないかと思う。言葉や雰囲気で恋に落ちる場合ももちろんあるけど、肉体の魅力の強烈さにはかなわない。この小説の主人公のニールは、ある夏の日のプールサイドで、女の子に眼鏡を持ってて、と言われた。その女の子、ブレンダが泳いで戻って来て眼鏡を受け取ってくるりと向こうを向き水着のお尻の部分を指でつまんで引き下ろしたとき、ニールは恋に落ちる。行数にしてたったの9行。恋に落ちるのってそんなものかもしれない。

彼女は名門ラドクリフ大学の学生で夏休み休暇で、実家に帰って来ている。実家は成功した金持ちのユダヤ人家庭だ。一方のニールは普通の家庭の出で、今は図書館で働いている。このあたり、「ある愛の詩」を思い出した。やはり主役の女の子はラドクリフ大の学生だが、こちらは男の子がハーバードで、さらに上という格差になっている。貧しい女の子が、大邸宅の男の子の家に招待されるシーンがあったけど、もしかしたら1959年出版の「さよなら コロンバス」が元ネタになっているのかも。逆バージョンということで。

格差、青春の揺らぎ、ユダヤ人のしがらみ、モラトリアム、微妙なズレ、など、アメリカ文学の雰囲気だなあ、と思う。映画「卒業」も思い出してしまう。

作者のフィリップ ロスは、現代アメリカ文学の代表的な小説家の1人、ということで今回作品を選んでみたが、他の作品や、他の代表的アメリカ文学も読んでみたいと思った。
家にいると、なかなか入り込めないタイプの小説です。よかった、読めて。
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by oakpark | 2016-12-18 00:35 | | Comments(0)

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