本「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」「枡太一の生物部な毎日」   

偶然なのですが、似たようなタイトルの本を2冊お盆休みに読みました。

★「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」  レイチェル・ジョイス著  亀井よし子訳
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★「枡太一の生物部な毎日」  枡太一著
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似てるといっても、タイトルが長めということと、どちらも「~のー」という形になっているということだけなのですが、最近こういう言い方が流行っているのでしょうかね。「ハロルド~」の原題は'The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry' 。もちろ内容は似ても似つきませんが両方とも面白かったので紹介します。


まず、「ハロルド~」ですが、これは新聞の書評で知りました。1人の老人が昔の知人に会うために徒歩旅行を始める、という、「ロードムーヴィー」ならぬ「ロードノヴェル」(そんな言葉あるかしらないが)。なんとなく惹かれて図書館で予約しました。買うのはリスクが高いなあと思ったので。二ヶ月くらい待たされたことを思うと結構人気のある本なのでしょうか。

なるほど私も、近年まれに見る、じわり、じわりという感動を味わったのです。この手の小説のほうが感動しますね。つまり、物語が劇的に展開するわけではないく、時として、状況描写が長く、かったるいな~と思われる部分もある。だけど、その分、その次のページに、ちょこっとだけ秘密がもらされたりしてたりすると、へへへえ~と驚くわけです。うまいなあ~、この著者。と思って調べてみると、著者のレイチェル・ジョイスは、20年以上、テレビやラジオや演劇の場面で活躍し、この小説は処女作なのだそう。なるほど、細部にわたる描写のすばらしさは20年以上のキャリアの賜物なのですね。

65歳のハロルドが昔の職場の同僚(女性)から手紙を受け取る場面から物語りは始まります。手紙には、今自分はがんを患い余命いくばくもない状況だけれど、ひと言昔のお礼がしたかったと書かれているのです。ハロルドは驚きながらも返事を書き、ポストに入れに行こうとする。しかし自分の手紙の言葉が軽すぎるのではないかと気になり、ポストに入れられない。次のポストまで歩くがまた入れられない。そうこうするうちに、ある店の若い女性に言われたひと言からこのまま歩いていって彼女に会いに行こうと思いつく。ふらっと出てきたそのままの格好で。そしてイギリス南部の街、キングストンから、北部の、ほとんどスコットランドとの国境近くにある街ベリックまでの627マイル(訳000キロ)、87日間の旅が始まる。

旅の間にさまざまなことに思いをめぐらせるハロルド。愛に恵まれなかった子ども時代。息子を溺愛する妻。冷え切った妻との関係。妻と出会った時のときめき、そして、元同僚と過ごした日々などなど。 読み進めるうちに、少しずつ真相が明かされていきます。でも本当に少しずつなのですよね。疲れて休もうと思うとちょっとだけ話が展開する。すると先が気になる。といううまいやり方にはまってしまい、とうとう実家(愛媛県大三島)との往復の新幹線の中で全部読んでしまいました。近年の遅読の私には珍しい現象。こういうのが好みなのかな。そういえば、少し前に読んだ、アガサ・クリスティーの「春にして君を離れ」も、少し似たタイプの小説でした。老年とまでは行かないけれど、中年後期に差し掛かった自分の人生を振り返る気分にもなりました。

もしかしたら、映画になるのかな、これ。映画になる前に是非読んでみてください~。



もう1冊、「枡太一の生物部な毎日」ですが、新聞の広告欄で見て、すぐに買いに走った本です。私、こういう、楽しげなオタクなお話、結構好きなんですよ。普通の人ならそんなものに?と思うようなことに一生懸命になる人って面白い。日本テレビのアナウンサーで、「Zip」のキャスターをしている枡太一さんが、子ども時代、虫(特に蝶)に夢中になり、その後海に興味を持ち、アサリを研究をしたことなどを面白おかしく書いておられます。文章がとっても上手。大学時代、指導教官に「君は数学はダメだけれど、文章とプレゼンは上手だなあ」と言われ、人に伝える仕事を目指すことにしたそうですが、なるほど、お上手です。くすっと笑える箇所も数箇所あって、一気に楽しく読めました。中学時代の合宿でテントを張って虫を追っかけていると、突然両親があらわれたエピソードも笑ってしまいました。「近くに来たからよってみた」ってそんなことありえない~。親っておかしいですね。でも、ありがたいですね。

というわけで、私も今年の夏は2泊3日で大三島に行ってきました。大三島のことはこのときに書いてますね。これ食べるか、あれ食べるか?と言ってもらえることなんて今の家ではないこと。ありがたくて涙が出そうになりました。できれば半年に一回くらいは両親に会いに行かなければ、そのためにお金を取っておかなければ(遠いんだもの~)と思った夏でした。

by oakpark | 2014-08-28 13:47 |

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