映画「小さな巨人」 つけたし   

前回感想を書いた、映画「小さな巨人」について、もう少し書いてみようと思います。

いろいろと印象深い映画でした。まず、タイトルの「小さな巨人」ですが、これは主役のジャック(ダスティン・ホフマン)を拾って育てたインディアン部族の酋長がつけた名前です。体は小さいのに勇敢だということで「体は小さいけれど心は大きい(勇敢)だ」ということでつけられた名前です。酋長を演じた俳優さん(Chief Dan George)は、実際もカナダのインディアンのある部族の酋長なんだそうです。独特の雰囲気はやはり、生まれもったものだったのですね。
e0123392_22424919.jpg

この人の口から出る言葉は、重みがあるというか、意味深い感じがします。表現が独特で、たとえば「うれしい」ということを 'My heart soars like a hawk.'(私の心は鷹のように舞い上がる)と言うし、「決心した」というニュアンスのことを 'It's a good day to die.'(死ぬには良い日だ)と言うのです。この二つのフレーズは映画中、何度も出てきました。 詩的な美しい表現だと思いました。

詩的で美しいといえば、インディアンの人たちの名前もそうです。この酋長の名前は'Old Lodge Skin'ですし,酋長の奥さんは'Baffalo Wallow Woman' そういえば大きな人でした。ほかには、'Shadow That Comes In Sight'という人や、'Burns Red In The Sun' という人、'Younger Bear'という人もでてきました。男なのに女のような服装をした、おかまっぽいインディアンもいて'Little Horse'という名前でした。それぞれ、体の特徴などから名前が付けられていると思われますが、もし自分がインディアンだったらどんな名前を付けられるかと思うと、おそろしいですねえ。'Ugly Woman'とかつけられたらいやですよね。

先生も講義の中でおっしゃっていましたが、興味深いキャラクターが'Contrary'(逆)になってしまったインディアン。このインディアンは何でも逆の事をします。馬には後ろ向きに乗っているし、「こんにちは」のことをgood byeというのです。映画の中では、「人間は心の中で思っていることと逆の事をする」という人間の特性を皮肉っていると解釈することもできるそうです。そうえいば、これに関して最後のほうで印象的なシーンがありました。南北戦争のヒーローで、インディアン政策においても名をあげようと企むカスター将軍が、あるとき川の近くのインディアンの集落を見つけ、そこを襲うかどうかの決断をジャックにに尋ねるのです。身近な部下ではなくなぜジャックなのか。自分を殺そうとし、自分を憎んでいるはずなのに。(このシーンです)。
e0123392_2315193.jpg

カスター将軍はこう考えたわけです。この青年が自分を憎んでいることは明白だ。だから、自分に不利な道を勧めてくるだろう。しかしこの青年はは自分が彼の敵であることを知っていることを知っている。だから逆を言うに違いない。それならその逆の行動をとればいいわけだ。(つまり言われたとおりにすればいいということですね)かくして、カスター将軍はジャックがインディアンを襲うべしといったとおりに行動し、逆に大軍のインディアンにやられてしまう。人間社会は'contrary'だらけだということをこのエピソードは表しているのでしょうか。


ほかにもいろんな面白いエピソードがちりばめられています。ヘビの油を売り歩くペテン師が出てくるのですが、うそ臭い薬を売ってはだまされた客に仕返しをされ、手や足や目玉をもぎ取られたりするのです。金のために身体をすり減らして働く人間を皮肉っているのかなあと思ったりしました。そういえば、ヘビの油を売る人=snake oil salesmanで、普通名詞で「うそくさいものを売る人」という意味があるそうです。

前回も書きましたが、1970年公開のこの映画は、同じく1970年に公開された「ソルジャー・ブルー」と同様にインディアンの視点にたって、白人のインディアンへの暴行を描いた映画です。1960年代に黒人差別の撤廃を目指した公民権運動が高まりを見せましたが、その後の70年代はヒッピー文化の台頭とともに、ネイティブ・アメリカンの地位向上運動が高まって行ったそうです。同じく1970年に出版されたDee Brownという人が書いた本、'Bury My Heart at Wounded Knee'を講師のニック先生は高校生のときに読み衝撃を受けたそうです。ウーンディッドニーの虐殺について書かれた本です。インディアンの歴史において、1970年は大きな曲がり角だったのですね。今でも、インディアンの人たちはとても貧しく、ドラッグやアルコールなどのいろいろな深刻な問題があるそうです。

白人によるインディアンの虐殺も描かれてい、気が重くなるシーンもありますが、全体を通じて、ユーモアのある、笑わせるシーンも多く、うまくバランスの取れた良い映画なのではないかと思います。作り的に、一人の男がいろんな経験をして大人になっていくという点で、私は「フォレスト・ガンプ」とか「星の王子様」を思い出しました。 おすすめです~。

by oakpark | 2013-12-03 23:29 | 映画 | Comments(0)

<< 今年もクリスマス 映画「荒馬と女」「ビリー・ザ・... >>