これは絶対お薦めです! 高峰秀子「私の渡世日記」   

あまり褒められた方法ではないとは思うのですが、最近の私の読書の仕方は、まず書評などを読んで気になった本をとりあえず購入して積んでおき、時間が空いたときに、そのときの気分で読む本を決めるというものです。 図書館をあまり利用せず、買っておくなんて、なんてもったいない、と思われるでしょうが、残りの人生で読める本も限られているし、洋服などに比べると金額的にもたいした額はないので、そのあたりは節約しない主義です。とはいっても、そうやって「買っておく」のは、やはりハードカバーの本はほとんどなく、もっぱら文庫本が多いです。

今回は、高峰秀子さん死去のニュースを聞き、以前に「コットンが好き」という本が良かったので、その関連で買っておいていた「私の渡世日記 上、下」を読みましたが、これがなんと当たりも当たり、大当たりでした!
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高峰峰子さんが50歳くらいのときに、それまでの映画人としての人生を振り返り、印象的なエピソードを面白おかしく書いているのですが、まず驚くべきことは、高峰さん、本当に文章がお上手です。5歳の頃から俳優として一家の稼ぎ頭だった高峰さんは学校にもろくに行っていないのにもかかわらず、語彙も豊富で、ユーモアも、ちょっぴり毒も、そして細やかな気遣いもすべて上手に文章に織り込まれていて、あっぱれのひとことです。それまでの人生で出会ったさまざまな著名人のことを書き連ねていくスタイルは、以前に読んだ、宇野千代の「生きていく私」を思い出しましたが、断然高峰秀子さんのほうがっ読み物として面白かった。なんというか、文章が男っぽいのですよね。たぶんご自身の性格もかなり男っぽい部分があるのではないかな。女が女の武器を使いながら生きてきたのではなく、女が男っぽく見せながら、でもやはり女よという部分も残して周りに愛されながら生きて生きた人が高峰秀子という女優だと思いました。もちろん、これだけさばさばした性格なのだから敵も多かったでしょうが、万人にいい顔をしようとして存在がぼやけてしまうよりも、アクセントのきいた中身の濃い人生を歩むほうがこの人には合っていたともいえます。

文章にもリズムがあってとても読みやすい。たとえば、野球の事を書いたくだりでは、「私から見れば野球とは
『四角い線を引いた中で、小さいボールをあっちへ投げたりこっちへ投げたり、バットでブッ叩いたりしているゲーム」という程度なのだから、他人にバカだと思われても仕方がない」だし、木下恵介監督に使われ演じた役のことを「頭のイカれたストリッパー」「優れた女教師」「ノイローゼの女学生」「八十五歳の不幸な老女」「平凡な主婦」「バカ丸出しの女房」「奸智にたけた妻」なんて表現している。一方、戦争中に慰問袋の中に自分のブロマイド写真を入れた若者たちが戦場に散っっていったという悲しい事実に対する複雑な心境もしみじみと語っている。生涯苦しんだ母との関係も、黒澤明に抱いた恋心も、私にはいちいち驚くことばかりで、近年にない速さで読破してしまった。 高峰秀子という人は、たいした人だと思う。 当事の女優さんはみなこれくらいの気骨をもっていたのかもしれないけれど、それにしても壮絶な女優人生だ。 同じ子年生まれということもあって(三回り違う)急激に親近感を持つようになった。この本をを書いていた時のの年齢も近いし。彼女の文章力の足元にも及ばないし、これからも追いつきそうにもないけれど、せめて彼女の100分の一でもいいから、不要なものを切ってすっきり生きる処世術を身につけたいものだ。

本の表紙の絵も、高峰秀子をかわいがった著名人の一人である、梅原龍三郎が描いた高峰秀子像です。

というわけで、当然の事ながら次は高峰秀子の本業である映画を見たくなった。
すぐにレンタルショップに行ったが、私がまず見たいと思った「浮雲」「カルメン故郷に帰る」「笛吹川」など、高峰作品がすべて貸し出されていて、かろうじて残っていた小津安二郎監督の「宗方姉妹」を見た。
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古風で貞淑な姉(田中絹代)と、おきゃんで自由奔放な妹(高嶺秀子)が男前の上原謙にほれる。置いてけぼりの山村総。 という話ではなくて、姉妹の性格の違いを時代の移り変わりに重ね合わせて結婚生活の不条理を描いている映画とでも言おうか。高峰秀子びいきになったからというわけではないだろうけれど、この映画での高嶺秀子もかわいい。一番印象に残る。 こんな役やら、どんな役やらが出来た人なのか、他の作品も随時見ていきたいです。 お勧めがあったら教えてくださいね!

by oakpark | 2011-01-11 23:51 | | Comments(4)

Commented by ユッキー at 2011-01-13 13:43 x
へ~、そうですか。
さっそく、メモりました。
今度、日本に行く人に、頼んで買ってきてもらいます。
でも、売ってないかもね。
そうですか、最近、眠れない夜は、小津安二郎の映画観てるんです。
ユーチューブで。
東京物語、わりと、全部、観られました。
わたしなんか、こういうものの方が、好きだわよ。
日本なら、レンタルで観られるけどね。
Commented by June at 2011-01-13 23:17 x
♪ ユッキーさん

そうですねえ~。私はインターネットで購入しました。
高峰秀子さん、あまりメディアでは取り上げられていません。
引退が早かったからかしら。

youtube で映画ってのもあるのですねえ。私はパソコンでは映画は観ないです。パソコンだと、ねそべれないもので。 テレビの前でソフアに寝そべって映画を観るのが好きです~(笑)。

「東京物語」は、私も少し前に観ました。独身のときだとあまり感じなかったかもしれませんが、既婚者には身にしみるはなしですね。小津安二郎監督の映画は、「東京物語」と今回の「宗方姉妹」しか観ていないのでこれから徐々に観ていくつもりです~。
Commented by Alison M. at 2011-01-14 17:54 x
読みたくなりました。
この方は、ある時から、生活を簡素化して
、晩年をモノを少なくして、心豊かに暮らす
ということを実践されたんですよね。(憧)
その方の、熟年時代の処世術ですもの、きっと
興味深いものでしょうね。

小津安二郎の映画は、「彼岸花」 「麦秋」・・・好きです。
Commented by June at 2011-01-14 23:49 x
♪ Alison M. さん

とってもお薦めの本ですよ~。
映画に詳しい方は、私以上に楽しめるのではないかしら。
憧れの銀幕の裏の世界を垣間見ることが出来ますよ。

>モノを少なく
そうみたいですね。 だから趣味の合わない贈り物は困る、とはっきりかいておられます。私はそこまではっきりは言えないけれど、それってわかるな~と思いましたもの。 「コットンが好き」のほうでは、高峰さんのおめがねにかなった品々が写真入りで紹介されています。
洋服は、黒とかグレートかばかりだそうだし、アクセサリーは真珠が好きらしい。女優さんらしからぬシンプルさですよね。

「彼岸花」「麦秋」のおすすめ、ありがとうございます!
機会があったらぜひ観たいです。
そのうち、カルチャーセンターでもとりあげるかも。

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