映画 「ミルク」 「プリティ・リーグ」   

今回は、実在の人物をモデルに作成された映画の紹介です。「ミルク(2008)」はレンタルDVDで、「プリティ・リーグ(1992)」はテレビで観ました。

前にも書いたと思いますが、実在した人物の人生を映画化するのはなかなか難しいと思われます。事実は曲げることが出来ないわけで、限られたエピソードのどこに焦点を当てて、どこにふくらみを持たせるか。どの人物を好意的に描き、どの人物を悪者に仕立て上げるか。映画製作者の好みによってよってずいぶん映画の出来に差が出てきます。さらに、お金を払って観に来てもらえるだけの「面白い」ものに作り上げなければならないので、事実を曲げない程度にドラマティックに盛り上げる必要もあります。では、「面白い」映画って何かと考えると、それは、心を揺さぶられるもの。 涙が出るほどの感動だったり、手に汗握るどきどき感だったり、そこまでいかなくても、ちょっと心にさざなみがたつくらいでもいい、でも、映画を観る前とあととで、何かしらの変化をもたらしてくれるような映画のことを私たちは「面白い映画」って言うような気がします。映画を観終わって、何も残らず、なんの変化も感じず、そのまま普通の生活の戻っていけるような映画はつまらないです。2時間、無駄にした~、と思ってしまうことさえあります。

さて、今回紹介する二つの映画は、どちらも面白かったです。つまり心が揺さぶられました。でも、この「心揺さぶられる」箇所というのは人によって違いますよね。今回も、あらすじはおいといて、私がどこで心揺さぶられたのかを書きたいと思っています。もしかしたらみんなと違っているかも?

「ミルク」(2008) ガス・ヴァン・サント監督
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70年代に自らゲイである事を公表し、何度かの挑戦の後、センフランシスコの市政委員となり、ゲイだけでなくさまざまなマイノリティの社会的地位向上のために奮闘したハーヴェィ・ミルクの半生を描いた映画。
まずは監督がガス・ヴァン・サント監督であることに、ちょい心揺さぶられ。 ガス・ヴァン・サント監督はリヴァー・フェニックスと仲の良かった監督だから。ゲイであることで有名な監督でもあるから、この映画を撮ったのも当然といえば当然なのかも。

つぎに心揺さぶられたのが、70年代を忠実に再現したであろう、衣装のすばらしさ。この前に本物の70年代の映画を観ましたが(日記にも書きました)、そのときの雰囲気そのものでした。ときどき実際の当事のニュース映像が挿入されるのですが、どちらが映画で、どちらが当事の映像なのかわからないほどの違和感なく連続性が保たれていた。ミルクの長年の恋人だったスコット(ジェームズ・フランコ)の初登場シーンのヒッピーっぽいスウェードのベストや、最初はミルクの運動の勧誘にならず、のちにミルクの政治活動の右腕的な存在になったクリーヴ(エミール・ハーシュ)の大きなフレームのめがねや、ぴったりしたTシャツやジーンズ、ぼわっとふくれた髪型が70年代そのもの。ミルクがオープンカーに乗ってパレードに参加する最後のほうのシーンでは白地に袖と襟に赤の縁取りのあるTシャツ。ああいうのって70年代ごろ、よくあったよなあ。

そして衣装の話ともつながるのだけれど、配役のすばらしさ。それぞれの俳優がとってもよい味を出していた。主役のミルク演じるショーン・ペンは言わずもがな。この人はどんな役も上手に自分のものにしますねえ。まあ、本人のハーヴェィ・ミルクのほうが人懐っこい優しそうな表情をしていますが。良かったなあ、と思ったのがジェームズ・フランコ。もともとかっこいい人ですが、そのかっこいい人が、ミルクのためにせっせと尽くす。出会った頃は「40歳以上の人はお断りだ」なんて言っていたのに、最後のほうで「50歳になれそうだな、おじさんよ」なんて言ってミルクへの情愛を示す。いや、このシーンに私はなぜか泣けてしまいました。長い年月を経て培われた「愛情」というのは静かで深いんだなあとじーんとしました。対照的にせっかちに愛を求めるラテン系の若者ジャックを演じたディエゴ・ルナもよかった。すれすれのところで生きている危うさがとってもよく出ていたと思う。「ダンシング・ハバナ」とか「天国の口、終わりの楽園。」なんかで観ていた俳優さん。
エミール・ハーシュもやっぱりうまいです。最初の登場シーンの演技がとっても印象的。きっとゲイの人のを身のこなしをかなり研究したんだろうな。「イノセント・ボーイズ」や「卒業の朝」を観ているけれど、やはり「イン・トゥ・ザ・ワイルド」も観なきゃ。 そして、ミルクを暗殺したダン・ホワイトを演じたジョシュ・ブローリンは最近大活躍。なんとあの「グーニーズ」でショーン・アスティンのお兄さん役を演じていた人だけれど、アカデミー賞を受賞した「ノーカントリー」でも主役級だし、色っぽいダイアン・レインとも結婚したし。そして今回はニュース映像のダン・ホワイトにそっくり。髪型やメークのおかげというのもあるだろうけれど、似ています。どんどん同僚のミルクにいいとこ取りをされてイライラが募ってくる様子を好演していた。 このダン・ホワイトと、ゲイの社会を否定しようと運動したアニタ・ブライアント女史は、映画の流れ上悪者のように描かれてしまっていますが、関係者の承諾等はとれているのかな。数年後に自殺してしまったダン・ホワイトの遺族とか、まだご活躍中のアニタ・ブライアントさん本人の意向はどうなのか、ちょっと気になりました。それにしても、70年代までのアメリカでは、なんと暗殺が多かったことか。ほんと怖いです。ミルクが演説の直前に「お前を狙撃する」というような脅迫文を受け取り少しびくつくシーンでは、エルヴィスが70年代のステージで脅迫されて、ボディガードをステージに上げていたというエピソードを思い出しました。

あと、何かのシーン(デモのシーンだったかな)で、ジュディ・ガーランドの歌う'Over the Rainbow'が流れたことも印象に残りました。どうしてなのかはよくわからないけれど、ジュディがゲイの人たちのアイドル的な存在であるとどこかで読んだことがあるので。


「プリティ・リーグ」(1992) ペニー・マーシャル監督
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1943年に創設された全米女子プロ野球リーグを題材にして、当事の女性差別が強く残っている世相や姉妹間のライバル意識などを描いた映画。私が一番驚いたのはなんといってもユニフォームです。野球なのにスカートなのですから。今もソフトボールは短パンだったいるするけれど、スカートはないでしょってかんじ。女子野球は当事、完全に「見世物」的な存在だったことがわかります。スライディングなんてしようものなら怪我だらけになりそう。でもやっていたみたいですよ。
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観客を喜ばせるために容姿も重要なポイントだったよう。この選手かわいいです。
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家族と離れ、夫と離れ、怪我だらけになりながら、お金を稼ぐため、そしてきっと何より自分のために野球に打ち込んでいた女性たちがいたんだと思うと、これまたじわ~んと感動しました。
スポーツでお金を稼ぐって大変なこと。特に女性の場合は。

そういえば、先日、柔道の谷亮子選手が引退しました。これまで見てきた女子柔道選手で印象深いのは、山口香選手、田辺陽子選手、そして谷亮子選手でした。谷選手は期待通りに勝ってくれる強い選手でした。テニスの伊達選手と同じくらい偉大だと思う。偉大な女子スポーツ選手が増えるといいな。

スポーツ観戦が大好きな私。今晩は体操を少し見てから寝るつもりです~。体操を見るのも大好き!

by oakpark | 2010-10-20 23:48 | 映画

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