名著 だと思います   

1月はさくさくと10冊読んだのに、2月に入ってぱたっとペースダウンしてしまいました。いかんいかん、年間100冊読破を目標にしているのに。冬季五輪が終わり、編み物のシーズンが終わったら、また読書に精を出そうと思っています。

名著を2冊読みました。
*「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」   米原万里
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いやこれは文句なしに面白い。絶対お薦めの本です。さすが米原万里さん。米原万里さんの本には一時凝っていて、3~4冊続けて読んだことがあります。ユーモアあふれる機知に富んだ文章にどんどん引き込まれていきました。実はこの本もその時期に購入し、読み損なっていた本です。やはりすばらしかった!少し前に日記にも書きました、最近私のお気に入りになった斉藤美奈子さんが解説を書いていることも意外な発見でした。斉藤さんも米原さんの影響を受けているのかも。同類の面白さと納得。「米原万里が当代きっての名エッセイストであることに異論のある人はいないでしょう」「彼女の代表作をひとつ上げるならこの『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』になる」と斉藤さんは書いておられます。なるほど~。この本には米原万里の真髄がつまっている。子ども時代に特異な経験をしている米原万里にしか書けない小説。確かに代表作といえるかもしれないな。ご存知の方も多いと思うけれど、米原万里は共産党員だった父親の仕事の関係で、1959年から1964年まで、年齢にすると9歳から14歳という多感な時期にチェコスロバキアのプラハにあった「ソビエト学校」に通い、共産圏の国出身の友人たちに囲まれて育ちました。本書は、その頃に起こった出来事と、その後、社会主義体制崩壊後に訪ねていった当事の友人たちの姿を、生き生きとした会話中心の文章で書きあげたものです。何がすばらしいって、そのリアルな会話なのです。いくら頭の良い米原さんだからって、まさか少女時代の会話をすべて覚えているはずは無いので、かなりの部分があとからの創作だと思われるのですが、これがもう、いかにも少女らしい、かわいくて無邪気でこましゃくれた会話の応酬で、少女たちがすぐそばにいて、自分は聞き耳を立てているような感覚に襲われるほどです。内容の濃さもさることながら、次にどうなるのかと気をひかせる展開の妙もあって、一気に読み進んで行きたくなるのは、米原さんの筆力のなせる業だなあと思いました。それにしても13歳の米原さん、「ソ連共産党機関紙『プラウダ』と日本から半月遅れで届く日本共産党機関紙『赤旗』を目をされにして読み比べていた」なんて、問題意識の高い頭の良いお子さんだったのですね。子ども新聞の漫画しか読まないうちの子とえらい違いだわ。この本に登場する米原さんのお友達の出身国はギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビアで、それぞれのお国事情も知ることが出来て、勉強にもなります。あの衝撃的な写真が今も印象に残るチャウシェスクがいかにひどい指導者だったのかということなども。名エッセイストの米原さんが2006年に亡くなられたことは本当に残念です。昔「ブロード・キャスター」という番組にゲストで出ておられた頃は、だれ?このおばさん(失礼!)と思っていましたが、その後、著作を読みすっかりファンになってしまったのに。女性で、東側諸国のことを語れるという点でも貴重な存在の方でした。

*「オーパ!」   開高健
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朝日新聞の『百年読書会』の2月の課題図書をやっとこさ読みました。やっとこさというのは、
私は釣りにもアマゾンにも全く興味が無いから。。。だって怖いもの、アマゾンのピラニアなんて~。大自然が嫌いというわけでもないのですが、未開の地に足を踏み入れたいとかそういう願望は全く無くて、どちらかというと飼いならされてとっつきやすくなった自然が好みですね。きれいな水洗トイレのある自然ね。そういうのは開高さんに言わせると自然じゃないのかもしれないけれど。名前だけは知っていたけれど著作は読んだことは無く、どういう人なのかよく知らなかった開高健という人を少しだけわかる機会を与えてもらったことは感謝です。見開きページが、字のページと写真の(しかもカラー!)ページが交互にくるように構成されている文庫本で925円とはお安い感じがします。写真を見るだけでも楽しい。ピラニアに一瞬で食べられ頭と骨だけになっている魚の写真とか、丸焼けになった子牛の写真など、強烈なものもありますが、泥で濁った広大な川に浮かんだ小船のなかでタバコをくわえて釣り糸をたれている開高さんの写真なんて、なんだかどきどきするかっこよさがある。だって落ちたらピラニアよ。こんな小さな船で大丈夫かよ~って思っちゃう。46歳でアマゾンに出かけていくなんてすごすぎる。それにね、私発見したのですが、開高さんの服装もなんとなくかっこいいのですよ。おしゃれなのです。これは狙ってそうしたのか、たまたまなのか。思うに、何枚かある写真がすべてかっこいいから、きっと狙ったもの。つまり開高さんておしゃれのセンスも優れていた人なんだと思うなあ。この辺も人気の秘密かも?
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帽子もバンダナも素敵と思った。他にも、白い長袖Tシャツに紺か黒のズボンにアディダスっぽい青と赤のラインのスニーカーをはき、頭にはオレンジのバンダナといういでたちの写真もあった。
『百年読書会』の課題でなければ読まなかったであろう本です。出会いに感謝。3月は三島由紀夫の『金閣寺』だ!手ごわそう~。

by oakpark | 2010-02-22 00:38 |

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