映画「マルコムX」   

次回のカルチャーセンターで取り上げられる映画「マルコムX」を観た。
長い映画で、途中何度か意識が飛んだけれど(深夜に観たので)、なんともいえない余韻の残る映画だった。
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Malcom X ,1992年  監督:スパイク・リー  出演:デンゼル・ワシントン  アンジェラ・バセット

まず、デンゼル・ワシントンがとてもかっこよかった。デンゼル・ワシントンは私が一番好きな(気になる?)黒人俳優だ。最初に彼を見たのはどの映画だったか。アメフトのコーチを演じた「タイタンズを忘れない」だったか。それとも、ゲイの弁護士のトム・ハンクスと渡り合った、敏腕弁護士役の「フィラデルフィア」だったか。とにかく、すでに大御所という風情で、黒人でアメリカの良心を演じる俳優、そう、ハリソン・フォードのような存在のように思えていた。「かっこよくていい人」だった。メグ・ライアンが兵士役だった「戦火の勇気」にも出ていたし、「ジョン・Q」では、子供を思う父親役だった。デンゼル・ワシントンってこんな感じね、大体わかったわ~、と思っていた頃にたまたま観た「グローリー」でぶっ飛んだ。やっぱりすごい俳優だったんだ。南北戦争時代の黒人兵士の役。当事の黒人が抱いていただろう、やり場のなり怒りを爆発させる青年を見事に演じきっていた。最後はほんと泣けた。彼の出世作品であろう「遠い夜明け」も観たはずだけだれど、あまり印象に残っていないな。やはり「グローリー」が一番すごかった。そして、今回の「マルコムX]はそれに次ぐ、あるいはそれを凌ぐほどの衝撃だった。 前半のチンピラ部分から、後半のりりしく自信にあふれる教団のリーダーへの演じ分け。家族を思う不安げな表情(母性本能くすぐります)。う~ん、なかなかいいね、彼は。しかし、1954年生まれっとことは、もう50歳を超えているのね~。

そして、新たな発見。この映画で描かれるマルコムXは、私が思っていた印象と少し違った。非暴力を訴えたキング牧師と対照的に語られることの多いマルコムXは、黒人至上主義で暴力に訴える怖い人というイメージだった。しかし、この映画によると、不必要に暴力に訴えていたのではなく、「白人も黒人と一緒に過ごしたくないだろうから、黒人も自分たちのルーツに立ち返って独自の世界を構築するべきだ」というスタンス。白人を排除するとか、白人を攻撃するとか、そういうわけではなかったようだ。牧師だった父親がKKKによって惨殺され、残された母親は精神をやみ、9人の子供たちは里子に出された。裕福な白人の家族に引き取られたマルコムだったが、そこでの生活も彼に心の平穏を与えるものではなかった。成績がよく将来は弁護士になりたいと思うが、教師からは黒人は道が限られているので大工がよいと言われる。高校を中退したマルコムはやくざな世界に入り込み、さまざまな悪行に手を染め、窃盗の罪で逮捕される。そして獄中で運命的なイスラム教との出会いがあり、視力を落とすまで猛勉強する。出所してからは、ネイション・オブ・イスラム教団の教祖であるイライジャ・ムハンマドに心酔し、獄中の勉強で得た、豊富な語彙力を駆使した演説のうまさから、リーダーにのし上がっていく。 ところがイライジャの本当の姿を知り失望したマルコムは教団を去る決心をする。メッカに巡礼し新たな境地を開いたマルコムは、彼独自のグループを設立するが教団との亀裂はますます深まり、ついには、ニューヨークのハーレムのホールでの演説中に教団のメンバーにより15発もの銃弾を浴びて、暗殺されてしまう。

監督のスパイク・リー自身も映画前半部分にマルコムの友人役で出演しています。若い監督なのですね。特に前半部分の映像がスタイリッシュでとてもかっこよかったと思う。タバコの煙の使い方とか、デンゼルのちょっとした表情のカットの入れ方とか。すごくおしゃれだった。やくざのボス役のデルロイ・リンドーっていかりや長介に似ているなあ~、という思いが頭から離れなかった。最近、いかりや長介関連の本を読んだせいもあるけれど。そう思って見ていると、出演の黒人俳優がそれぞれ、なんかこういう感じの人、日本人にもいそうだな~なんて思ってしまった。

きっと、すごく研究して、マルコムXそのものにデンゼル・ワシントンを作り上げているのだと思う。映像や写真に残されているのと同じ構図が数多く再現されていたようだ。ライフル銃を持って窓の外をうかがうシーンとか。髪の毛は黒ではなく茶色。それはマルコムの母親に白人の血が混じっているからだそう。めがねとか服装とか、表情とか、すごく似せていると思う。笑顔の魅力的なところも。デンゼル・ワシントンのはまり役だと思う。そういえば、デンゼルは子供の一人にマルコムという名前をつけているみたいです。

デンゼルの演説シーンは迫力があった。ちょっと、オバマ大統領の演説を彷彿とさせた。で、マルコム自身の演説を見ると、それほどオバマ大統領には似ていない。でも、キング牧師よりマルコムXのほうに似ているような感じもするな~、なんて。
*マルコムXの演説


*デンゼル・ワシントンの演じるマルコムX


それにしても、ところどころ、ぼ~っとしながら観たせいもあり、どの人が「ネイション・オブ・イスラム」側で、どの人がマルコム側か最後のほうはわかりませんでした。最初マルコム側でその後教団側についた人もいるみたいだし、もう一回観なくちゃ。友達が「外人はみな一緒の顔に見えるから洋画は好きじゃない」と言っていたけれど、それもわかる気がする。黒人の人は見分けがつきにくい。だって、髪の色とか髪型が似ているんだもの。きっと、外国の人が日本の映画を観ると、みんな一緒に見えるんだろうな。

by oakpark | 2009-04-29 23:12 | 映画

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